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児童相談所への虐待相談は全国で年間22万件、うち一時保護が2万件。

虐待を繰り返さず、子どもたちの権利を守り、パーマネンシーを保障するためにはどうすればいいか

【子どもと里親のマッチング】

施設か里親かを選択する権利は子どもには原則として認めない。しかし、里親のプロフィールを見た際、里親候補と面談した際に自身にとっての良し悪しを判断する(選べる)権利は認めるべきである。現在里親になっていない里親候補を含め、いずれかの里親支援センターに担当を委ねたうえで、児童相談所と里親支援センターが情報共有して、共同作業で積極的にマッチングを行う運用変更16

変更理由:子どもの意思を尊重することで、いい里親に出会えるようにするため。現状では猫アレルギーの子どもが猫を飼っている里親を指定されたり、里親が門限をきびしくするために子どもに反発されるケースがある。児童相談所は子どもが納得したうえで里親を指定する責任がある。また児童相談所は里親支援センターと共同作業でマッチングを行うべき。)

【子どもの実親との面会権】

子どもは実親と会う権利を有し、親権者である実親にも子どもと会う権利がある。会わせないのは、実親が希望しない場合、児童相談所所長が面会すべきではないと判断(判断は年2回見直しを行い、できるだけ最小限に)した場合に限定することに変更17。実親が虐待の事実を認めないからといって、面会できないとしてはならない。

変更理由:面会できないことは子どもの権利を奪っている)

【養子縁組にも里親手当レベルの報酬を】

自立支援体制としてのベストは、普通養子縁組で名実ともに親権者を確保すること。但し、養子縁組でも18歳までは里親手当レベルの報酬を国として支払うよう変更18。その手続きは必ず児童相談所経由で行う。

 

変更理由:養子縁組に里親同様の報酬を支払わないことが、養子縁組を進みにくくしている、いつまでも里親のままでは不安定であり、子どものパーマネンシーを保障することに反する)

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【里親の期間延長】

自立支援の観点からは、住む場所、相談できる相手が自立できるまでは必要であり、児童相談所長が子どもが18歳以降も里親に自立支援の機能を求める場合は、児童相談所が里親期間の延長を行う運用に変更19。施設入所者の場合には、施設内の自立支援担当職員がフォローを行っているが、退所後のフォローには限界があり、過重な業務となっている。自立援助ホームへの移行がスムーズにできるよう、児童相談所のフォローが必要。

変更理由:児童相談所の監督下で自立支援を行うことで、子どもの利益を守る必要あり)

※自立援助ホームは15歳から20歳が本人の意思で入所するものであり、現状では児童相談所との関連は無い。

【児童虐待によるトラウマ治療】

児童虐待によるトラウマ、PTSDの治療は、自立後であっても国費で受けられるよう変更20

 

変更理由:本人には責任が全くなく、国が対応すべきものである。災害や事故、パワハラ・セクハラ、家庭内暴力などによるものも同様か)

【里親要件における部屋数の緩和】

研修前の里親の適性判断で部屋の数をチェックしているが、他に実子がいる場合でも、その子どもが了解するなら不要ではないか。運用を変更21

変更理由:狭いと感じれば転居するのが通常で、重視すべきは里親になりたいというモチベーション。

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【里親同士と里子同士の情報交換】

里親の里親会への参加が義務付けられているのも、一方で里子同士の情報交換には便宜は図られていないのもおかしい。運用を変更22

変更理由:まず里親会への参加はあくまで里親の任意とすべきであって、里親支援センターが適性のある個々の里親に有償でサポーターを依頼してはどうか。お互いの情報交換は希望者に対して行うべきであり、あくまで個々の里親の判断によるべき。一方で里子にも希望者に対し、児童相談所が情報提供をはかり、自主的な情報交換を認めるべきではないか。)

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【里親委託解除を減らすための方法】

1.里親委託時に解除となる場合の理由を文書で明確に伝える

 ①実親に戻す

 ②子どもが里親の元でこれ以上暮らすのを良しとしない場合

 ③里親による虐待が一時保護の要件に該当する

2.里親支援センターが里親の子育ての良き相談相手になり、孤独にさせない

3.児童相談所が里親支援センターの判断を尊重する、里親支援センターが委託解除が妥当と考える場合は、里親にその理由を伝える

4.里親委託時にできるだけ実親と面会し、今までの子育てについての情報を得る

5.その後もできるだけ実親とコミュニケーションを取り、子どもにも面会させる

6.子育てについてのYouTube動画を閲覧したり、研修に参加する場を用意する

7.里親と子どもとの関係が順調で、かつ変更11に記載の実親に戻すことが難しい状況であれば、児童相談所の判断により一般養子縁組を推進する

【特別養子縁組と普通養子縁組】

普通養子縁組は主に相続対策として運用されてきたが、

①実親との関係が残り、戸籍で実親をたどれる点、実子としての相続が可能なこと

②特別養子縁組において縁組の解消は困難だが、普通養子縁組であれば子どもが15歳以上であれば協議離縁により裁判所の判断がなくても養子縁組の解消が可能なことなどの子どもにとっての利点がある。

 

実親がわかっている場合には、裁判所の判断がなくても、実親の了解のもとに児童相談所が里親との間に普通養子縁組を推進することとしてはどうか。その際に子どもの積極的な同意は不要と思われる。

 

特別養子縁組の成立のためには、実親の了解がなくても

①父母が意思表示できない場合

②父母による虐待、悪意の行いがある場合

③その他養子となる子どもの利益を著しく害する事由がある場合

には裁判所の判断が必要とされている。

 

しかし、子どもの利益を第一に考えると、実親がわかっている以上、特別養子縁組ではなく、普通養子縁組とすべきではないか。なぜなら、養親と良好な関係が築けていない場合には、15歳以上に実親との同居を選択できることが、子どもの利益につながるからである。また、子どもが戸籍上で実親をたどれない特別養子縁組の制度は、子どもにとっても不都合である。

 

特別養子縁組においては、成立前に里親になってから6ヶ月以上の監護期間が必要とされている点も、予防接種の際など形式的に親権者となれないがゆえのデメリットが生じており、運用上の改善が必要。

また特別養子縁組では民間業者の斡旋も認められているが、児童相談所と進める場合との費用負担に大きな格差がある。外国人を親とする、一部民間企業の斡旋(多額の報酬を得ている)には社会的非難がある。民間業者による斡旋の場合でも、児童相談所の一定の関与を前提とすべきではないか。

【ファミリーホームの立ち位置】

法的にはファミリーホームは、里親や児童養護施設職員など経験豊かな養育者の住居において、同居して養育を行うとされ、5名ないし6名の子どもの大きな家族となる。里親手当に加え、相応の措置費を交付できる制度となっている。位置づけは施設ではなく、家庭養護となっている。夫婦+補助者の計3名で養育を行う。子どもの生活費、人件費、建物を賃借して行う場合には賃借費なども支払われる。児童相談所からの受託義務があり、監査対応も必要となっている。

児童養護施設が複数のグループホームの形で運営されることも増えているが、養育者が交代制であることに違いがあり、ファミリーホームの場合のみ家庭養護が可能とされている。

課題としては

①兄弟を一緒に受け入れるには向いているが、いずれ5名ないし6名集めなければならない点が問題。普通の家では1人1部屋だと部屋数が足らなくなるため、賃借する必要が生じるが、そうなると家庭養護としては育てにくい環境となる。

家庭養護と位置づけるのであれば、生涯を通し親子と呼び会える関係が望ましく、3名ないし4名を基本とし、最大6名とすべきではないか。

②安定した家族を維持する必要があり、受託義務があるとはいえ、児童相談所からの短期受託や対応が難しい子どもの安易な受け皿とすることには問題がある。

③ファミリーホームとして長期間となる場合も想定されるが、親権者となる普通養子縁組に移行するには相続者が増えすぎるという課題があり、したがってパーマネンシーの保障は難しいのではないか。里親が確保できるのであれば、里親委託を優先すべきである。

【虐待をした実親への対応】

現状では、子どもを一時保護という形で取り上げ、虐待を認めない限り、実親に子どもを返さないという機械的な運用が平然と行われているようだ。

刑罰は拘禁刑に一本化されたが、その背景にはいくら刑罰によって反省を促しても、再犯は防止できなかった事実がある。看守が犯罪者に寄り添い、どうすれば犯罪をせずに済んだか、どうすれば再犯に至らなくさせられるかを一緒に考えるように向かっている。

 

同じことは虐待への対応にも言えるのではないか。

虐待した実親を非難することなく、寄り添い、どうすれば虐待をせずに済んだか、どうすれば二度と虐待をせずに済むかを一緒に考える必要がある。

このためには児童相談所に実親に寄り添う担当者を置く必要がある。母子保健を実践する保健師の業務がそれに近いが、保健師は不足しており、児童相談所において保健師をリーダーにチームを編成して対応する必要がある。虐待を行う父親への対応もしなければならない。

実親に寄り添う担当者がいないと、子どもを引き離すという実質的な刑罰に、虐待をした実親は耐えられないのではないか。

子どもを親から引き離すことは、子どもにとっても苦痛であることが多い。

虐待の背景には貧困や夫婦の不仲が原因となっていることも多く、原因を取り除く必要もある。

また、一時保護に至らなかったケース、一時保護を解除したケースは子ども家庭センターが実親へのフォローを引き継ぐ必要があり、子ども家庭センターの保健師と児童相談所の保健師が情報を共有し、連携する必要もあるかと思う。

【児童相談所の組織課題】

まず児童相談所に求められる課題が多すぎるということに尽きる。やるべきことは子ども家庭庁などにより明示されているものの、全く対応しきれていない現実がある。

所長による統制が十分に取れておらず、各担当者に判断が委ねられたり、本来果たすべき機能が果たせていなかったりする。

児童相談所運営指針では、総務部門、相談・判定・指導・措置部門、一時保護部門の3部門を持つことが示されており、相談・判定・指導・措置部門は規模に応じて細分化するとされている。

 

まず一時保護部門では虐待の疑いがある場合には緊急判断として一時保護を優先すべきだが、収容人数の問題から、十分に保護できていない現実がある。これを解決するには、一時里親、乳児院、児童養護施設に補完してもらわなければならない。一時里親は市区町村の子どもショートステイ事業等と連携することで可能となっている地域もある。

また一時保護の要なしと判断された場合、一時保護を解除する場合には、子ども家庭センター等にフォローを引き継いでもらう必要がある。

 

相談・判定・指導・措置部門は子ども、実親、里親の相手に寄り添い、信頼を得てフォローを行うべきだが、あまりに不十分な実態がある。子どもの利益と実親の利益、里親の利益は異なるため、同じ担当が行うのには無理がある。担当を分け、それぞれの情報と意見を元に、組織としての判断をすべきである(それらの情報・意見・判断は文書による証拠を残しておく必要がある)。

まず虐待対応である一時保護が優先だが、その後すみやかに子どもの本当の意見を聞かなければならない。危惧すべき虐待の事実が無い場合には実親にすみやかに返す。虐待が生活苦によるものなのか、実親の精神面によるものなのかを判断し、前者の場合は区市町村の協力を得て、早急に改善をはかる。

また、ほとんど考慮されていないようだが、親族知人里親の可能性を探るため、一時保護された場合には、実親の了解のもと、里親担当が中心になってファミリー・グループ・カンファレンスを開催することを原則とすべきである。

実親担当は研修を含め、信頼を得ながら徹底して実親のケアを行い、原則として2年以内に子どもを戻せるかどうかの判断を行う。

乳児院は3歳未満での100%里親委託をめざし、児童養護施設は里親カタログの活用とフレンドホームの経験を通して、里親委託につなげる。子育て経験のある里親には主に3歳以上の子どもの里親になってもらう。残念ながら、里親のなり手が不足しており、国をあげて募集と子育て経験の無いまたは乏しい里親には子育てスキルの強化(子育て動画の活用を交え)をはかる必要がある。

実親と里親が情報を共有して子育てを行うことも重要だが、それは児童相談所の実親担当と里親担当が協力して行う。

子どもと実親の面会は実親担当の判断のもと積極的に行うものとし、必ず実親担当が同席する。

里親支援センターの創設により、里親のフォローは強化されつつあるが、まだ道半ばである。里親のモチベーションを維持し、子どもに信頼される里親になってもらわなければならない。延長線上で養子縁組の手続きを推進する。

 

児童相談所の監視は区市町村議会が議会に児童相談所長に出席してもらい、質疑応答により改善の進捗状況を確認することが、最ものぞましい。

子どもの意見を聞くための児童心理司、実親へのフォローを行う保健師の意見は児童相談所長に直接届けるべきであり、中間管理職を介在させるべきではない。組織運営を行う所長の責任は重い。

地域における子ども家庭センター、一時里親等との連携も所長の責任であり、議会を通して児童相談所へのサポートを議論する必要がある。

 

なお、児童相談所による乳児院、児童養護施設の管理は難しいと思う。それらはあくまで子どもを預かってくれている協力者であり、児童相談所はフォローをお願いをする立場だからである。管理は都道府県の担当部署が行うべきである。子どもの意見の確認や実親の現状説明は児童相談所の子ども担当が定期的に行わなければならないと思う。

里親か施設か実親か

パーマネンシーの保障​

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