
里親入門 第一歩はフレンドホームから
アメリカの里親制度

アメリカから学ぶ困難な課題をもつ子どもの里親教育(家庭養護促進協会 800円)から抜粋し、とりまとめました。
パーマネンシーとフォスターケア
パーマネンシーとは永続性・恒久性
フォスターケア(里親制度)は「一時的な」措置であって、永続的な家族形態ではない
生みの親>親戚>知人・友人>知らない人
1997年ASFAがパーマネンシー到達を急ぐために作られた
過去22か月のうち15か月間、家族再統合に向けての改善が見られない場合は親権停止を進める。
並行プランニング:家族再統合に向けて最大限の努力が行われると同時に、もし不可能だった場合に備えて養子縁組等、他のオプションをソーシャルワーカーが奮闘し、開拓する。
子どもが引き離されるときに、生みの親は必ず、「親戚に誰か子どもを見てくれる人はいませんか」って聞かれる。それは子どもは家族の中で暮らす権利があるから。できるのであれば家族の中でとどまってほしい。もし親戚がいないというのであれば、血がつながってなくても知っている方、家族ぐるみの友人の方で、それをやってくださる方を探す。それでも駄目なら第3者である、血のつながっていない里親のところに委託されるようになる。この優先順位も、子どもが自分の家族内で暮らせるように、パーマネンシーに配慮した形になっている。
家族再統合を目指したものの、親の改善が乏しいまま、家に帰ることもできず、養子にもなれず、里親のところを転々としていた。それはフォスターケア・ドリフトと呼ばれ、問題視されていた。
そこで、子どもがフォスターケアに入って、15か月間状況が改善しなかった場合に、里親機関は親権停止の申し立てをする義務が課せられた。子どもに養親候補がいることが前提。
親権停止の裁判ではソーシャルワーカーが証人となる。具体的な努力内容、それでも状況が改善しなかったことを報告する。親権停止の裁判は申し立てから完了まで早くて1年。だいたい2,3年かかる。親権停止がなされると、生みの親への援助活動は終了する。
親権停止がなされると、実の親に面会しなくてよくなるが、兄弟との縁、祖父母との縁は一生切れない。里子が合いたくないと言わない限り、面会権がある。家族再統合がされずに養子縁組になる割合は5割から7割くらい。
年現在)。
施設と里親
1年間でかかるコスト。施設に暮らした場合は18万5000ドルから30万ドル(2013年当時)。里親のところに委託されると4万ドル。生みの親のところにとどまり、予防ケアを受けていると1万3000ドル。アフターケアで暮らしている場合は5500ドル。
アメリカで施設措置されている子どもは15%。精神科医または心理士の専門的な判断で、「この子は24時間施設でのケアが必要であり、家では子どもの安全が守れない」と書いてもらい、かつ家庭裁判所の裁判官を納得させないと施設措置にはならない。
子ども一人を施設に委託するのにかかるお金で、4人から7人の子どもが里親の下で暮らせる計算になる。

里親研修など
里親になりたい方には、ソーシャルワーカーがきちんと説明をする。里親ケアにいる間、子どもは法的にも心理的にも生みの親と里親の間で揺れ動く。里子がいろんな面で苦しんでいるのを里親が気持ちを汲んであげられる、そういうことも里親のスキルとしてすごく大切。
里親研修は30時間の必須トレーニング。親族里親は15時間になる。研修はMAPPトレーニングと言われ、親から引き離された子どものトラウマや発達を理解して、里親として安全で健やかな環境を提供していただくことを目的としている。特にアメリカの里親研修で共調しているのが喪失体験。あとは生みの親とのパートナーシップ。子どもだけでなく、親をも含めた温かい援助ができるかどうか。どうして里親になりたいか。里親になりたいと思ったきっかけは何かなど、自分のことをすごく問われるトレーニングである。
里親がもうこの子は私の家に置いてあげられないというのが3つある。
1つが、子どもの問題行動に対処できなくなった場合。2番目が里子が里親の実子に対して何か手を上げた。危害を加えた場合。3番目は、里親もしくは里親の家族が性的虐待をしているとでっちあげられた場合。この3つのケースに対して里親の心が折れてしまうことがよくある。これに対しては、委託前から可能性について話し合っていくことがすごく大切である。

よき里親になるための12のポイント
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自分自身の家族を理解する。
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効果的にコミュニケーションをとる。
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子どものことを理解する。
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子どもの強みを伸ばし、ニーズを満たす。
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子ども、生みの親、里親機関とパートナーとして接する。
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喪失と愛着の専門家になる。
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子どもが自分の行動をうまくコントロールできるよう助ける。
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子どもと過去(生みの親やきょうだい)と絆を保ち、育むのを助ける。
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子どもに自尊心を持たせる。
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子どもの健康と安全を保障する。
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自分の家族に与える影響を考える。
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情報を吟味して意思決定をする。
里親の資格を得るには
里親の資格を取るにはまずホームファインディングに電話。そのときにオリエンテーションに出席するという形で予約していただく。オリエンテーションを受けて、里親になりたい意思があれば、申請書を書いていただく。ここで初めてホームファインディングのソーシャルワーカーが任命され、里親資格認定まで責任をもってお世話させて頂く。里親認定までだいたい3,4か月。月4回オリエンテーションは組まれており、うち2つが日中。後の2つが夜。

里親のリクルート方法
人が集まるところにチラシをおく、インターネットの広告機能を使う、里親になるためのスキルがある人が集まるところへ出向く、現在里親をしている人からの紹介(紹介料を払う)。

里親の審査と報酬
里親の審査はきびしい。里親にふさわしくなければはっきり言う。説明責任があるし、相手には知る権利がある。
アメリカでは養子縁組でも子どもが21歳になるまで、補助金が引き続き支払われる。月にだいたい500ドル。子どもに障害がある場合は最高1800ドル。補助金は里親に対する報酬ではないので、住宅費や光熱費にあてるのは禁止。

里親措置解除
自分の実子に手をあげた時、里親が子どもの問題行動にギブアップしたとき、虐待・ネグレクト、特に性的虐待をでっちあげられたとき(確率が高い)。

親子分離手続き
ニューヨーク市の児童保護局はACSと呼ばれている。ACSが虐待の通報を受けて調査し、子どもに危険があると判断した場合、裁判所の承認を得て親子分離をする。通報から24時間以内にACSの調査官が家庭訪問し、学校や医師から情報収集し、子どもの安否を確認する。引き離しの前に「セーフティ・カンファレンス」と呼ばれるミーティングを開く。それはACSと実の親がオープンに話し合う。ここで親子を分離せざるを得ないという判断がなされた場合は、児童保護スペシャリストが家庭裁判所に行き、児童虐待・ネグレクトがあったという申し立てをし、引き離しの承認を求める。裁判官が認めて子どもが引き離される。親子面会の頻度、どこでするのか、何時間するのか、そういったことは裁判官の承認が無い限り、勝手に変更できない。子どもの長期的な居場所を決める(パーマネンシー・プラン)のも裁判官。裁判所の承認後、児童保護スペシャリストが子どもを引取に家に向かい、一時保護所に連れていく。その間ACSはニューヨークにある里親機関(民間)全部に電話をかけて交渉し、里親機関からこの里親で引き受けるとの連絡をもらうと、ケースが正式に受理される。
親子分離から里親に即委託になる。一時保護所みたいなところはあるが、だいたい24時間から48時間。ソーシャルワーカーは里親に洋服代の小切手200ドル程度を24時間以内に手配、赤ちゃんには専用のベッド、カーシートなども別途支給。
次にソーシャルワーカーはACSからなるべくたくさんの情報を得て、当時の状況、何が問題だと思ったかを生みの親にも同じ質問をする。次に子どもを深く理解する。そしてゴール設定をする。里親ケアの最大のゴールは、子どもが安全に、幸せに、永続的な家族のもとで暮らせること。細かいゴールを決めていって、里親、子ども、そして生みの親をサポートする。

生みの親の訓練
子どもがフォスターケアに入ると、生みの親に裁判所命令としてサービスプランを受けることが義務付けられる。薬物治療、ジョブトレーニング、怒りのコントロール、親業プログラムというしつけの仕方や子どもの発達を学んでもらうプログラムなど。親子分離20日後にACS主宰のフォローアップ・カンファレンスがあり、状況を確認する
親がこなさないと、子どもが家に帰ることもできなければ、親権を失うこともある。ソーシャルワーカーが3、4週間、つきっきりで生みの親をフォロー。

里親と生みの親の面会
親子分離72時間以内にトランスファー・カンファレンスを開催。里親と生みの親の30分程度の顔合わせのミーティング。
裁判所から最低週1回2時間の親子面会が義務付けられていて、同席して確認を行う。面会がうまくいっていない場合には生みの親とのミーティングも行う。里親の家庭訪問では子どもに自己紹介の際、「私の仕事は、あなたが安全で健康で幸せに暮らしていることを確認すること。お父さん、お母さんの家に早くもどれるようにお手伝いすることです」と話し、どうしてお父さん、お母さんと一緒に暮らせなくなったか知っているかを確認し、知らなければ、あなたのせいではないと説明。子どもが適切なサービスが受けられているかも見守る。言語療法、理学療法、作業療法、発達障害を最小限に食い止めるサービスやトラウマを持つ子供には心理セラピーなど。

実親に返す場合
いったん実親に返しても、予防プログラムで最低半年間ソーシャルワーカーが見守る。うまくいっているようなので、里親委託を打ち切りたいと裁判官に話して、裁判官がよいっていうなら里親委託を打ち切る。その後も別のソーシャルワーカーが引き継ぐ。

里親の資格を得るには
里親の資格を取るにはまずホームファインディングに電話。そのときにオリエンテーションに出席するという形で予約していただく。オリエンテーションを受けて、里親になりたい意思があれば、申請書を書いていただく。ここで初めてホームファインディングのソーシャルワーカーが任命され、里親資格認定まで責任をもってお世話させて頂く。里親認定までだいたい3 ,4か月。月4回オリエンテーションは組まれており、うち2つが日中。後の2つが夜。
