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里親委託ガイドライン

1.里親委託の意義

 

 里親制度は、何らかの事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ど も等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度であ る。家庭での生活を通じて、子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着 関係の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る有意義な制度である。

 近年、虐待を受けた子どもが増えている。社会的養護を必要とする子どもの多くは、 保護者との愛着関係はもとより、他者との関係が適切に築けない、学校等への集団に うまく適応できない、自尊心を持てないなどの様々な課題を抱えている。また、望ま ない妊娠で生まれて親が養育できない子どもの養育が課題である。子どもを養育者の 家庭に迎え入れて養育を行う家庭養護である里親委託が、これまでよりさらに積極的 に活用されるべきである。

 児童福祉法(以下「法」という。)において、児童は適切な養育を受け、健やかな 成長、発達や自立が図られる等を保障される権利を有することが位置付けられており、 その上で国民、保護者、国、地方公共団体がそれぞれこれを支える形で、児童の最善 の利益を優先して考慮され、児童の福祉が保障されることが明記されている。このこ とを踏まえ、社会的養護を必要とする子どもの養育を進める必要がある。

 また、法第3条の2において、「国及び地方公共団体は、児童が家庭において心身 ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない。ただし、 児童及びその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況を勘 案し、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあつては 児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、 (中略)必要な措置を講じなければならない。」と規定していることを十分に踏まえ、 子どもを養育者の家庭に迎え入れて養育を行う家庭養護である特別養子縁組を含む養 子縁組や里親委託を、原則として取り組んでいかなければならない。

 しかし、現状においては、地域社会の変化や核家族化により、社会的養護を必要と する子どもが増加する中、虐待による影響など、様々な課題を抱えた子どもが多くな っている一方で、このような子どもに対応できる里親が少ないこと、里親家庭におい ても家庭環境が変化していたり、里親制度への社会の理解不足から、里親委託が進ま ない事情がある。多様な子どもに対応できる様々な里親家庭、例えば、乳幼児、中・ 高校生等の高年齢の子ども、障害のある子どもや非行児童などそれぞれに養育支援が 可能な里親を開拓し、社会的養護の担い手として多くの里親を確保する必要がある。

 

 さらに、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する 法律(平成28年法律第110号)が平成28年12月に成立し、民間あっせん機関 が養子縁組のあっせんを行う上での様々な規制が設けられたところである。

 児童相談所は、同法の規制を直接受けるものではないが、同法の規定の趣旨に則り、養子縁組 里親の選定や委託等の業務を行うことが求められる。 併せて、児童養護施設等においても、できる限り良好な家庭的環境における養育を 目指して、子どもの個別のニーズに応ずることが可能となるような養育単位の小規模 化や、地域社会に存在して、地域社会に子どもも養育者も参加できるような地域化を 推進していくことが必要である。

2.里親委託優先の原則

 

 家族は、社会の基本的集団であり、家族を基本とした家庭は子どもの成長、福祉及び保護にとって自然な環境である。このため、保護者による養育が不十分又は養育を 受けることが望めない社会的養護のすべての子どもの代替的養護は、家庭的養護が望 ましく、里親委託を優先して検討することを原則とするべきである。特に、乳幼児は 安定した家族の関係の中で、愛着関係の基礎を作る時期であり、子どもが安心できる、 温かく安定した家庭で養育されることが大切である。

 社会的養護が必要な子どもを里親家庭に委託することにより、子どもの成長や発達 にとって、

 

①特定の大人との愛着関係の下で養育されることにより、自己の存在を受け入れら れているという安心感の中で、自己肯定感を育むとともに、人との関係において不 可欠な、基本的信頼感を獲得することができる、

 

② 里親家庭において、適切な家庭生活を体験する中で、家族それぞれのライフサイ クルにおけるありようを学び、将来、家庭生活を築く上でのモデルとすることが期 待できる、

 

③ 家庭生活の中で人との適切な関係の取り方を学んだり、身近な地域社会の中で、 必要な社会性を養うとともに、豊かな生活経験を通じて生活技術を獲得することが できる、

 

というような効果が期待できることから、社会的養護においては養子縁組里親を含む 里親委託を原則として検討する。

3.里親委託する子ども

 

 里親に養育を委託する子どもは、新生児から高年齢児まですべての子どもが検討の 対象とされるべきであり、多くの課題を持ち、社会的養護を必要としている子どもの 多様さを重視し、子どもと最も適合した里親へ委託する。

(1)保護者による養育の可能性の有無

① 棄児、保護者が死亡し又は養育を望めず、他に養育できる親族等がいない子ど も

 長期的な安定した養育環境が必要であり、法的にも安定した親子関係を築くこ とが望ましい。このため、特別養子縁組や普通養子縁組を希望する養子縁組里親 に委託し、子どものパーマネンシー(恒久的な養育環境)を保障することを優先 して検討する必要がある。

② 将来は、家庭引き取りが見込めるが、当面保護者による養育が望めない子ども

 家庭において、特定の大人との愛着関係の下で養育される中で、健全な心身の 成長や発達を促すことが必要なことから、積極的に養育里親への委託を検討する。 また、家庭復帰に向けて、保護者と子どもの関係調整のために、引き取り後の家庭生活を想定し、必要な支援を行う。

(2)子どもの年齢

① 新生児

 特定の大人との愛着関係の下で養育されることが、子どもの心身の成長や発達 には不可欠であり、今後の人格形成に多大な影響を与える時期でもあることから、 長期的に実親の養育が望めない場合は、子どもにとって安定し継続した家庭的な 養育環境を提供することが必要である。

 また、委託の期間が限定されている場合も、特定の大人との関係を築くことは、 健全な心身の成長や発達を促すことから、里親委託は有用である。

 新生児については、障害の有無が明らかになる年齢を待ってから、里親委託を 検討する考え方もあるが、心身の発達にとって大切な新生児の時期から里親委託 を検討することが重要である。

 また、予期せぬ妊娠や若年の妊娠など虐待のハイリスクといわれる要支援家庭 については、市区町村子ども家庭総合支援拠点、母子健康包括支援センター(子 育て世代包括支援センター)、地域の保健機関、医療機関、子育て支援機関等と 協力し、児童相談所が出産前から早期の相談支援に努める。

② 中学生や高校生年齢の子ども

 里親委託を通じて、地域生活、家庭生活上の知識や技術の獲得といった今後の 自立に向けた支援が可能である。また、子どもの状況に応じて、子どもが居住し ていた地域の里親に委託することにより、学校への通学や家庭での生活スタイル を大きく変えないで支援をすることができる。

 高年齢の子どもを養育するにあたっては、子どもの養育経験の豊富な里親が望 ましいことから、年齢の高い里親など、中学生や高校生に対応できる里親を開拓 し、積極的に活用する。

 なお、子ども本人に里親家庭で生活する意義を説明し、動機付けを十分に行う 必要がある。

(3)施設入所が長期化している子どもの措置変更

 施設に長期間入所している子どもについて、早急に自立支援計画の見直しを行い、 里親委託を検討する必要がある。自立支援計画の見直しの際などには、児童相談所 は、保護者の面会状況等を確認し、保護者の養育意思の確認、生活状況の把握等の 家族アセスメントを行い、適切な総合判断を踏まえた里親委託の検討が必要である。 また、施設に配置されている家庭支援専門相談員や里親支援専門相談員等と連携し、 里親委託の推進を行う。

① 乳児院から措置変更する子ども

 できるだけ早い時期に家庭における養育環境と同様の養育環境で、特定の大人 との愛着関係の下で養育されることが子どもの心身の成長や発達には不可欠であ ることから、原則として、里親委託への措置変更を検討する。

② 施設入所が長期化している子ども

 当初は里親委託を検討したが、うまく里親と適合しなかったことから施設に入 所している場合を含め、施設での生活を継続しているすべての子どもについて、 子どもの状態と保護者の状況を考慮し、常に里親への委託を積極的に検討する。

③ 1年以上(乳幼児は6か月)面会等保護者との交流がない子ども

 保護者の生活状況等を調査し、家庭引き取りが難しい場合は、保護者に対し、 子どもの成長・発達における家庭養護の必要性について十分説明を行い、里親制 度についての理解を得るなど、里親への委託に努める。

④ 保護者の面会はあるが、家庭引き取りが難しい子ども

 里親へ委託した場合でも、面会や外泊等の交流ができることを丁寧に説明し、 子どもの成長・発達における家庭養護の必要性について理解を得るなど、里親へ の委託に努める。

⑤ 法第28条措置の更新により施設入所が長期化している子ども

 引き続き保護者による虐待のおそれがあるとして法第28条措置の更新が継続 している場合においても、子どもの成長や発達には家庭養護は必要であるため、 里親への委託に努める。

(4)短期委託が必要な子ども

 短期での受け入れであれば受託可能な里親は比較的多いこともあり、保護者の傷 病や出産等委託期間が明確な子どもについては、原則として里親委託を活用する。 特に幼稚園等に通う幼児や学齢児、高年齢児は子どもが元々住んでいた地域での里 親委託が可能であれば、引き続き通園や通学が可能となる。子どもにとっても大き く生活が変わらず、保護者との距離が近いことにより、子どもの情緒の安定や親子 関係の安定が図られることもある。

(5)特に専門性の高い支援を必要とする子ども(専門里親への委託)

① 虐待を受けた子どもや障害等があり、特別な支援を必要とする子ども

 集団での対人関係や施設での生活になじめず、施設等では不調になるおそれが ある場合、又は不調になった場合には、子どもの状態に適合した専門里親等が確 保できる場合には、委託を検討する。

 また、保護者がない、又は養育できないなどの子どものうち、虚弱、疾病、障 害を有する子どもについては、最も適合する里親との調整を十分に行い、適切に 養育できると認められる専門里親等が確保できる場合には、委託を検討する。

② 非行の問題を有する子ども

 家庭復帰が困難で、かつ、施設の集団では対応が難しい場合は、子どもの状態 に適合した専門里親等が確保できる場合には、委託を検討する。

(6)里親へ委託することが難しい子ども

 すべての子どもは養子縁組里親を含む里親委託を原則として検討するが、次のよ うな場合は当面、施設入所措置により子どものケアや保護者対応を行いながら、家 庭養護への移行を検討する。

 ① 情緒行動上の問題が大きいなど、家庭環境では養育が困難となる課題があり、 施設での専門的なケアが望ましい場合

 ② 保護者が里親委託に明確に反対し、里親委託が原則であることについて説明を 尽くしてもなお、理解が得られない場合(法第28条措置を除く)

 ③ 里親に対し、不当な要求を行うなど対応が難しい保護者である場合

 ④ 子どもが里親委託に対して明確に反対の意向を示している場合

 ⑤ 子どもと里親が不調になり、子どもの状態や不調に至った経過から、施設での ケアが必要と判断された場合

 ⑥ きょうだい分離を防止できない場合や、養育先への委託が緊急を要している場 合など、適当な  「家庭における養育環境と同様の養育環境」が提供できない場合 (この場合については、あくまでも一時的なものとし、積極的に里親の新規開拓 に取り組み、できるだけ早期に「家庭における養育環境と同様の養育環境」に移 行させること。なお、「一時的」とは、乳幼児の場合には、日から週単位、長く とも数ヶ月以内には移行すべきであり、就学後の子どもについては、長くとも3 年以内には移行すべきである。)

4.保護者の理解

 

(1)保護者への説明

 保護者が養育できない場合、児童相談所が子どもの最善の利益となるよう里親や 施設の選択を行うが、保護者へは十分説明を行い、里親委託について理解を求める。

 特に、長期にわたり保護者による養育が見込めない場合、虐待等の不適切な養育 が予想される場合は、児童相談所から里親委託を積極的に勧める。

 養育里親に委託することについて、保護者にとっては、「子どもを取られてしまうのではないか」「子どもが里親になついてしまうのではないか」「面会がしづら くなるのではないか」など里親委託へ不安を抱くことがあるので、以下の点を十分 に説明する。

① 保護者へは里親制度、特に、養育里親と養子縁組を希望する里親との区別を説 明し、里親は社会的養護の重要な担い手であり、児童相談所が引き続き支援を行 う中で、保護者と協力し、子どもの養育を行うものであることを説明する。

② 社会的養護については、里親委託が原則であり、養育里親による家庭環境が子 どもの健全な心身の発達や成長を促すものであることを説明する。

③ 保護者との調整は基本的には児童相談所が行うが、対応困難な保護者等を除き、 保護者と子どもとの面会や外泊、通信等については原則可能であることを説明し、 その方法等については十分に保護者や里親と調整しておく。子どもや保護者の状 況により、直接里親と保護者が連絡を取ることが不適切と判断した場合は、児童 相談所が必要な調整等を行う。ただし、法第28条措置の場合や通信面会制限や 接近禁止命令を受けた場合、対応が難しい保護者である場合、面会等が子どもの 福祉を害する恐れがある場合は、児童相談所が面会等を適切と判断するまでは制 限等することもできる。

(2)保護者の承諾

 里親委託の措置を行う際の保護者の承諾については、法第27条第4項で「親権 を行う者又は未成年後見人の意に反して、これをとることができない」と定められ ている。これは、これらの者が反対の意思を表明している場合には措置の決定を強 行できないという意味であり、積極的な承諾がなくても、反対の意思表明がなけれ ば、里親委託の措置を行うことは可能である。ただし、できる限り承諾が得られる よう努めることは必要である。

① 保護者の行方不明や意向が確認できない場合

 保護者の行方不明や意向が確認できない場合も、児童福祉法第27条第4項の 保護者の意に反することは確認できないこととし、措置をとることは可能である。

 なお 、都道府県が客観性を必要と認めるときは、児童福祉法第27条第6項 (児童福祉法施行令第32条)により、里親委託の援助方針を児童福祉審議会に諮り、意見を聴取することは有用である。

里親委託後、行方不明等の保護者が現れた場合は、里親制度の意義を説明し、 理解を求める。

 保護者と連絡がとれなくなる場合を想定し、事前に里親委託への措置変更につ いて了承することが明文化されている場合は、その承諾の撤回が明示的にされる までは、その意思表示は有効であり、保護者の意に反する場合に当たらない。

②施設入所は承諾するが、里親委託に反対の意向が明確な場合

 本来、子どもの最善の利益を優先し、児童相談所が措置先を決定する仕組みで あり、里親か施設かを保護者が選ぶ仕組みになっていないことについて説明する。 里親委託に難色を示す保護者には、(1)①②③について十分に説明し、里親委託が原則であることを説明して、理解を求める。

 なお、最終的に理解が得られない場合は、法第27条第4項により、親権者の 意に反しては同条第1項第3号の措置をとることはできないことから、里親委託 を行う場合は、子どもの個別ニーズに合わせて法第28条措置を検討することと なる。

 

③ 法第28条による措置の場合

 法第28条措置においても、里親委託を行うことは可能である。この場合、子 どもの安全の確保や保護者とのトラブルを回避するために、委託先を明らかにし ないことも可能である。また、保護者と十分に話し合い、子どもの養育方法につ いて児童相談所の指導に従う意向が示された場合は、委託先を伝えることも可能 である。

 ただし、家庭裁判所への法第28条申立時に、里親委託することを明記してお くことが必要である。また、保護者に子どもの措置先を伝えない必要がある場合 には、家庭裁判所に提出する資料のうち措置先に関する記載のある部分について は非開示を希望する旨を明示するとともに、審判書に里親名等を記載しないよう 希望を述べておく必要がある。

④里親委託後、保護者が反対の意向に変化した場合等

 里親委託後、保護者が反対の意向に変化した場合や行方不明の保護者が現れて 保護者の意に反することが判明した場合は、(1)①②③について丁寧に説明し、 理解を求める。

児童虐待等不適切な養育により家庭引き取りが困難で、かつ、保護者と児童相 談所の意見が対立している場合は、一時保護や委託一時保護にするなど、子ども の安全確保を優先した上で、児童福祉審議会の意見の聴取や法第28条の申立等 の法的対応などを検討する。

 また、子どもが里親家庭での生活を希望し、委託の継続を希望する場合は、子 どもの意向を十分に聴いた上で、子どもの最善の利益を検討する。

5.里親への委託

 

(1)里親委託の共通事項

① 里親家庭の選定(マッチング)

 里親に子どもを委託する場合は、子どもと里親の交流や関係調整を十分に行っ た上で委託の適否を含め判断を行うことが必要であるため、一定の期間が必要で ある。また、その子どもがこれまで育んできた人間関係や育った環境との連続性 を大切にし、可能な限り、環境の変化を少なくするなどその連続性をできるだけ 保てる里親に委託するよう努めることが望ましい。

 子どもに関しては子どもの発達や特性、保護者との関係などアセスメントを行 い、保護者との交流の有無や方法、委託の期間や保護者への対応方法などについ て検討する。

 里親に関しては、委託する子どもとの適合を重視し、里親の年齢、実子の養育 経験、これまでの受託経験、幼児への養育が適した里親であるか、発達の遅れや 障害等に対応できる里親であるか、また、保護者との対応が可能な里親であるか など、里親の持つ特性や力量について考慮した上でマッチングを行う。特に、障 害を有する子ども等で里親委託が望ましい場合は、経験豊富な里親を活用する。 また、子どもの成長と養育者としての里親の体力を鑑み、里親委託を検討する。

 また、養子縁組を前提とする場合には、個々の子どもの状況に応じて自治体を 超えたマッチングが有用な場合もあり、近隣の自治体等と、子どもや里親家庭の 支援を連携して行う仕組みや、登録里親の情報共有など、家庭養育を推進する仕 組みづくりに取り組むことが望ましい。

 なお、子どものアセスメントや子どもと里親の調整には、里親支援機関と連携 することも有用である。

② 委託の打診と説明

 里親委託を行う場合、里親に委託したい子どもの年齢、性別、発達の状況、委 託期間の予定、保護者との交流等について伝え、里親家庭の状況や、実子や受託 児童がいればその子どもの様子を確認した上で、受託可能かどうかについて打診 する。受託可能という里親の意向が得られれば、具体的なケース説明を行う。な お、里親宅の家庭訪問を行うことは、里親家庭の直近の現状を改めて直接把握で きることになり、有効である。

 また、里親に対し、受託を断ることができることを伝え、受託できるかどうか、 家族とも話し合い家族にも同意を得た上で受託の決定をするなど十分に考えても らうことが大切である。

新生児委託や養子を前提にする場合は、保護者の意向が変わったり、子どもに 障害や疾病が見つかることもあるので、里親には将来起こりうる変化について、 十分に説明する。なお、説明の内容は記録することが望ましい。

③ 子どもと里親の面会等

 子どもと里親の面会では、児童相談所の子ども担当職員と里親担当職員が異な る場合は、その役割を明確にする。子ども担当職員は、子どもに対し、面会につ いての事前説明や、里親や里親家庭についての紹介をした上で、里親との面会が うまく進むよう支援する。一方、子どもが里親委託を断ることができることも説 明する。里親担当職員は、里親に対し、子どもについての情報や留意点を伝えた 上で、面会がうまく進むよう支援する。

 施設に入所している子どもの場合は、当該施設との調整を行い、子どもと里親 の関係づくりに協力してもらうよう依頼する。受託する里親の不安を軽減するた め、初回の面会までに子どもの日常の様子や子どもの反応などを施設から伝えて もらうことも必要である。 家庭から里親委託する場合は、必要に応じて子どもと里親との面会を実施する。

 このように里親委託までには、面会や外出、外泊など行い、また、外泊中に児 童相談所が家庭訪問などを行い、子どもと里親の状況等の把握に努める。子ども の気持ちを大切にしながら、子どもが安心できるよう支援し、里親と委託する子 どもとの適合を調整することが重要であり、丁寧に準備を進めることが大切であ る。

 里親委託のための調整期間は、施設での面会や外出・外泊などの交流に係る里 親側の負担等に配慮し、できるだけ長期にならないよう努め、長い場合でも概ね 2、3か月程度を目安とする。子どもの不安感等にも配慮し、子どもと里親の両 方の気持ちや状況を十分に把握し、交流を進める。

 なお、調整期間中の外泊に際して、施設入所中の子どもを里親の居宅に外泊さ せる場合には措置中(又は一時保護委託中)であること、一時保護中の子どもを 里親の居宅に外泊させる場合には一時保護中(又は一時保護委託中)であること の証明書等を発行することで、里親が委託前の子どもとの外泊に係る休暇等を取 得しやすい環境を整備する一助となると考えられる。

 委託開始の決定は、学齢児であれば学期の区切りに合わせるといった配慮をす るとともに、子どもと里親の関係性を見極めた上で決定する。 なお、里親と児童相談所の子ども担当職員、里親担当職員、可能であれば保護 者も含めて、子どもの養育についての情報を共有し、常に連携できる体制を作っ ておくことも有用である。

 また、里親には、委託の理由や経緯、子どもの発達や行動、保護者等家族の状 況、養育の留意点や今後の見通しを説明するとともに、養育を適切に行うための 必要な書類を交付し、里親をはじめとする関係者と一緒に自立支援計画を立てる ことも必要である。

(2)養育里親へ委託する場合

 養育里親と養子縁組里親との違いを保護者に丁寧に説明し、長期に委託する場合、 数週間や1年以内など短期間の委託など、ニーズに応じた多様な里親委託ができる ことを説明し、理解を得ることが大切である。

 家庭引き取りが可能な子どもだけでなく、何らかの形で保護者との関係を継続す る場合は、定期的な面会や外出等の工夫や親子関係の再構築の支援を行う。里親は、 状況に応じて、保護者に対し子育てのアドバイスを行ったり、よりよい子育てのモ デルとして具体的な支援を行うことも可能である。また、児童相談所と連携して、 保護者との一定の距離をとった交流を続けながら生い立ちを整理し、子どもと保護 者、相互の肯定的なつながりを主体的に回復するための支援など、子どもの保護者 への気持ちをくみ取り、配慮することが必要である。

 短期で委託する場合、子どもの生活の変化を最小限に抑える観点から、児童相談 所は市町村等の協力を得て、必要な調査をし、できるだけ居住する地域の近くの里 親に委託することが望ましい。

その場合において、緊急を要するケースの場合は、児童委員や社会福祉主事等からあらかじめ児童相談所長に電話等による連絡で了解を得ることによって仮委託と するなど、弾力的な運用に配慮する。  なお、仮委託を行った場合は、速やかに子ど もの状況や保護者の状況等を調査し、養育里親への正式な委託に切り替える。

 なお、仮委託のみで終了した場合は、緊急の保護を必要とした事例とみなして、 委託一時保護として処理することとする。

 委託の措置理由が消滅したと考えられる時期には、児童相談所が保護者の状況を 確認し、委託の解除等措置の円滑な実施に努める。

 委託の解除にあたっては、子どもを現に養育する里親も積極的に親子関係再構築 支援を行うなど、関係機関が連携して継続的なフォローを行う必要がある。

 また、施設に入所している子どもについても、里親支援機関と協力する等により、 夏休みや週末を利用して家庭生活を体験するために養育里親へ委託を行うなど、子 どもにできる限り家庭養育を提供できるよう、積極的な運用をする。

(3)専門里親へ委託する場合

 虐待等で深く傷ついている子ども、障害のある子どもや非行傾向のある子どもに ついては、アセスメントを丁寧に行い、慎重に委託を検討する。

 専門里親に委託する子どもは、様々な行動上の問題を起こすことがある場合があ り、児童相談所、施設や関係機関等と連携し、療育機関でのケアや治療を取り入れ ながら、委託された子どもと専門里親の調整を行い、きめ細やかな支援が必要であ る。特に、施設から措置変更で委託された場合は、必要に応じて、施設の指導員等 子どもの担当職員やファミリーソーシャルワーカーに委託後の里親への助言や養育 相談の支援を依頼する。

 また、専門里親への委託期間は2年以内(必要と認めるときは、期間を超えて養 育を継続することはできる)としているところであり、2年を経過した後の対応に ついては、関係機関等で協議し、子どもへの説明等の時期を含め、速やかに対応す る。

(4)養子縁組を希望する里親の場合

 児童福祉の観点からの養子縁組制度の意義は、保護者のない子ども又は家庭での 養育が望めない子どもに温かい家庭を与え、かつその子どもの養育に法的安定性を 与えることにより、子どもの健全な育成を図ることができるという点である。この ため、要保護児童対策の一環として、パーマネンシー(恒久的な養育環境)を必要 とする子どもが適合する養親と養子縁組を結べるよう制度を活用する。 とりわけ特別養子縁組は、永続的な家庭の保障という観点から、社会的養護を必 要とする子どもにとって極めて重要であることを念頭に置いて取組む必要がある。 委託する養子縁組里親は、一定の年齢に達していることや、夫婦共働きであること、 特定の疾病に罹患した経験があることだけをもって一律に排除するのではなく、子 どもの成長の過程に応じて必要な気力、体力、経済力等が求められることなど、里 親希望者と先の見通しを具体的に話し合いながら検討する。

 また、子どもの障害や疾病は受け止めること、養子縁組の手続中に保護者の意向 が変わることがあることなどに対する理解を確認するとともに、子どもとの適合を 見るために面会や外出等交流を重ね、里親の家族を含め、新しい家族となることの 意志を確認する。

子どもとの面会等に際して、里親の呼び方など子どもへの紹介の方法はそれぞれ の状況に応じて対応する。

 養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があり、特別養子縁組は実親との法 的な親子関係が切れ、戸籍上は長男・長女等と記載される。しかし、裁判所での審 判決定によることは記載され、実親をたどることはできることを説明する。 また、特別養子縁組の手続きは、養親となる者が居住地の家庭裁判所に申し立て を行い、6か月以上の養育状況を踏まえ、審判により成立する。6か月の期間は申 立時点から起算されるが、申し立てる前に、児童相談所から里親委託され、養育の 状況が明らかな場合は、この限りではない。特別養子縁組は、父母による監護が著 しく困難又は不適当である等特別の事情がある場合において、子どもの利益のため に特に必要があると認められるときに成立するものであり、そのような場合には積 極的に活用する。

 なお、特別養子縁組の成立には、父母の同意が原則として必要とされるが、父母 において子どもの利益を著しく害する事由がある等の場合には、父母の同意がなく ても、家庭裁判所は特別養子縁組を成立させることができる(民法(明治29年法 律第89号)第817条の6ただし書)。

(5)親族里親へ委託する場合等

 親族里親は、両親等子どもを現に監護している者が死亡、行方不明、拘禁、疾病 による入院等の状態になったことにより、これらの者による養育が期待できない場 合において、その子どもの福祉の観点から、家庭における養育環境と同様の養育環 境において継続的に養育されるよう、扶養義務者(民法に定める扶養義務者をい う。)及びその配偶者である親族に子どもの養育を委託する制度である。 親族里親へ委託する場合には、次の点に留意する。

 ① 委託について、「両親等子どもを現に監護している者が死亡、行方不明、拘禁、 疾病による入院等の状態になったことにより、これらの者による養育が期待でき ない場合」には、精神疾患により養育できない場合なども含まれる。なお、実親 がある場合は、実親による養育の可能性を十分に検討する。

 ② 本来親族は、民法第730条に「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わ なければならない」とあり、民法第877条第1項により、直系血族等には、子 どもを扶養する義務がある。しかしながら、扶養義務がある場合であっても、親 族に養育を委ねた場合に、その親族が経済的に生活が困窮するなど結果として施 設への入所措置を余儀なくされる場合には、親族里親の制度を活用することによ り、一般生活費等を支給し、親族により養育できるようにすることができる。

 ③ 親族里親は、保護者等がいる場合でも委託が可能となっているが、この場合、 実親と親族の中で子どもの養育を行うのではなく、子どもを児童相談所が保護し、 児童相談所が親族里親に委託するものであることを、実親及び親族に説明し、了 解を得ることが必要である。

 ④ 扶養義務のない親族に対する里親委託については、養育里親が適用される。

 ⑤ 親族里親及び親族による養育里親の制度については、制度の内容や趣旨があま り知られていないことから、児童相談所において、相談者が制度を利用すること が可能と見込まれるときは、制度について適切に説明を行うことが必要である。

(6)ファミリーホームへの委託

 ファミリーホームは、里親や児童養護施設等の経験がある者が養育者となり、養 育者の住居において、5、6人の子どもを養育する制度であり、里親と同様の家庭養護の担い手である。

 ファミリーホームは、養育里親と同様の子どもが対象となるものであるが、子ど も同士の相互作用を活かしつつ、複数の子どものいる環境の方がより適合しやすい 子どもや、個人の里親には不安感を持つ保護者に対しても有用であることから、子 どもの状況に応じてファミリーホームへの委託を検討する。

(7)特別養子縁組を前提とした新生児の里親委託の留意点

 未婚、若年出産など予期せぬ妊娠による出産で養育できない・養育しないという 保護者の意向が明確な場合には、妊娠中からの相談や出産直後の相談に応じ、出産 した病院から直接里親の家庭へ委託する特別養子縁組を前提とした委託の方法が有 用である。特別養子縁組は原則として6か月以上の養育状況を踏まえ、審判により 成立するものであり、新生児を委託され、6か月を経過して裁判所に申し立てるこ とで、1歳頃には子どもの権利関係の安定を図ることができる。

 まず、当該保護者から相談を受け、養育を支援する制度の紹介や親族による養育 が可能かなどを調査し、養育の意向の有無について丁寧に確認する。一方、特別養 子縁組を前提とした新生児委託を希望する里親には、子どもの性別や親の事情を問 わない、子どもの障害や疾病は受け止める、保護者の意向が変わることがあること などを説明し、理解が得られたかどうか確認することが必要である。なお、特別養 子縁組が成立するまでは、実親も里親も立ち止まって考えることができる。

 実親の妊娠中から里親委託まで切れ目のない支援で実親が安心して出産を迎え、 里親と自然に親子関係をつくることができるのが、特別養子縁組を前提とした新生 児の里親委託の特徴である。

(8)措置延長についての留意点

 里親や関係機関の意見を聞き、あらかじめ子どもや保護者の意向を確認し、児童 相談所長が必要と認めるときは、法第31条により満20歳に達するまでの間、委 託を継続することができる。特に子どもの自立を図るために継続的な支援が必要と 14 される場合は積極的に措置延長を行うこととされており、具体的には

 ① 大学等や専門学校等に進学したが生活が不安定で継続的な養育が必要な子ども

 ② 就職又は福祉的就労をしたが生活が不安定で継続的な養育が必要な子ども

 ③ 障害や疾病等の理由により進学や就職が決まらない児童で継続的な養育が必要 な子ども

などの場合、里親の意見を聞き、あらかじめ子ども、保護者の意向を確認するとと もに、延長することが必要と判断された場合には積極的に活用する。

(9)里親と子どもが不調になった場合

 里親と子どもの調整を十分に行ってから、里親委託し、委託後も児童相談所や里 親支援機関等が援助を行った場合においても、里親と子どもが不調になることがあ る。子どもが里親と共に生活する中で、子どものそれまでの養育環境の影響や子ど もの成長・発達に伴い、里親にとって子どもの養育に対する負担が高くなり、子ど もとの関係がうまくいかなくなるといった様々な状況が起こりうる。また、不適切 な養育が行われることも起こりうる。

 不調の兆しをできるだけ早く把握するよう定期的な支援を行い、関係機関の協力 も得ながら里親と子どもの関係を見守り、必要な場合には適切に介入していくこと が大切である。

① 情報の共有・協議・支援

 不調の兆しがある場合は、速やかに児童相談所の里親担当と子ども担当の双方 が里親家庭の状況を共有し、協議する。家庭訪問や相談支援を行い、里親に対し て必要な助言を継続的に実施することやレスパイトの利用を勧めるなど里親に休 息をしてもらうこと、また、里親の相互交流の場であるサロンへの参加や里親支 援機関等の相談支援の活用、さらには、子どもに対して児童相談所への通所指導 を行うなど、できるだけ委託継続が図ることができるよう支援を行う。

②委託解除

 やむを得ない場合は、委託解除を検討する。子どもや里親に対する支援による 解決が見込まれず、委託継続が適切でないと判断される場合は、無理を重ねるこ とで、子どもの最善の利益を損ねる可能性もあることから、委託解除による傷つ きをおそれて委託や委託解除が過度に慎重になることのないように、適切に委託 解除について判断する。

 委託解除を行う場合は、子どもへの必要な支援を検討するとともに、委託解除 に至る過程での混乱や分離による傷つきへの対応として、児童相談所の児童心理 司による支援も含め、委託解除の理由や今後の生活について丁寧に説明し、子ど ものケアを行う。同時に、里親に対しては、委託解除の理由等について丁寧に説 明するなど、養育がうまくいかなかったことへの傷つきや、喪失感等へのケアが 重要である。不調の原因が里親自身にある場合、子どもにある場合、双方に原因 がある場合、双方とも努力したがやむを得なかった場合もあることから、子ども や里親とそれぞれに対して一緒に振り返り、前向きに今後につなげていくことが重要である。

6.里親の認定・登録について

 

 里親制度は家庭での養育が困難又は受けられなくなった子どもを、温かい愛情と正 しい理解をもって自らの家庭に迎え入れて養育を行うものである。このため、里親は 子どもの養育についての理解及び熱意並びに子どもに対する豊かな愛情を有している ことなどが求められる。

 また、里親には、子どもの福祉を理解し、社会的養護の担い手として関係機関等と 協力し、子どもを養育することが求められ、その担い手としてふさわしい者が認定、 登録される。

 従って、里親を希望する理由や動機が社会的養護の担い手としての責任の上にある か、家族の理解や協力はあるのか、また、委託される子どもへの理解があるかなどを 面談や家庭訪問等で調査し、認定、登録する。しかし、社会的養護の制度の理解が低 い場合、児童相談所による指導や支援を受け入れることや、関係機関と協力すること が難しい場合、跡継ぎがほしい、老後の介護をしてほしい、夫婦関係を見直したいな どの里親希望者自身のためだけに里親となることを希望している場合は、認定、登録 が難しい。

(1)電話相談や問い合わせ時の留意点

 里親希望者から最初に電話等で問い合わせを受けたときには、里親制度の目的や 手続き、研修受講、里親認定申請後は都道府県の児童福祉審議会で審議されること など丁寧な説明を行う。

また、里親制度を正しく理解してもらうために、里親に関する講演会や講座への 参加を勧奨することも有用である。

(2)里親が認定申請を判断するインテーク面接の留意点

 再度里親制度の趣旨や公の責任であることを丁寧に説明する。また、委託される 子どもの状況で委託後に子どもの発達の遅れや障害が見つかること、受託後に里親 の家族関係が揺れることがあることなど具体的に説明する。

 養子縁組を希望する里親には、普通養子縁組と特別養子縁組の違い、子どもが持 つ背景や実親への思いなどすべてを引き受ける必要があること、適切な時期の真実 告知が必要であることなどを説明する。

(3)要件審査に当たっての留意点

 申請書を受理したときは、里親希望者が適当かどうか調査し、速やかに認定の可 否を決定しなければならない。

 養育里親については、法第34条の20第1項に定める欠格の事由に該 当しないことのほか、児童福祉法施行規則第1条の35の要件を満たしていること が必要である。

また、養子縁組里親については、法第34条の20第1項に定める欠格事由に該 当しないことのほか、児童福祉法施行規則第36条の42第2項に基づき、親がな い又は親による適切な養育が受けられない子どもを養育することについての理解及 び熱意、並びに子どもに対する豊かな愛情を有していることなどについて調査を行 うことが必要であるが、その際、以下の点についても留意すること。

① 里親の年齢

 養育里親、専門里親は、養育可能な年齢であるかどうかを判断し、年齢の一律 の上限は設けない。年齢の高い養育者であっても、中学生、高校生年齢など高年 齢の子どもの委託を検討するなど、子どもの多様なニーズに応えられる里親を登 録することが必要である。

 また、特別養子縁組を希望する里親の場合は、25歳に達しない者は、養親と なることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場 合においても、その者が20歳に達しているときは、この限りでない。

②里親を希望する者が単身である場合

 知識や経験を有する等子どもを適切に養育できると認められる者は認定、登録 して差し支えないが、経済的な基盤や養育を支援する環境等があるかなど確認す る。

 養子縁組里親の希望者が特別養子縁組を希望する場合、民法の規定により、縁 組成立の要件が夫婦協働縁組(婚姻している者)に限られることを説明し、理解 を求める。

7.里親家庭への支援

 

 法第 11 条第1項第2号ヘでは、里親制度の広報啓発等による里親の新規開拓から、 子どもと里親とのマッチング、里親に対する訪問支援等による自立支援まで、一貫し た里親支援を都道府県(児童相談所)の業務として位置付けている。児童相談所は、 里親への委託を推進するために、里親の居住する市区町村や里親支援機関、児童家庭 支援センター等と連携し、里親の資質の向上を図るための研修や、里親への相談支援、 里親の相互交流等の里親支援を行う。

 里親は社会的養護の担い手であり、養育に悩んだときに、一人で抱え込むのではな く、子育ての悩みを相談しながら、社会的につながりをもち、孤立しないことが重要 である。

 また、独自の子育て観を優先せず、自らの養育を振り返るために、他者から の助言に耳を傾けることも必要である。 また、里親、児童相談所、地域の関係機関との間に相互の信頼関係を築き、個々の 里親の多様性や状況がしっかりと把握されていることが、里親委託の推進と里親支援の前提となる。

 里親支援は、里親個人の判断だけで養育方針を決めたり、活用できる社会資源を開 拓するのではなく、児童相談所や地域の関係機関と連携をして、スーパーバイズや心 理職からの助言などにより里親による養育を支えることができるよう、養育のチーム を作っていくという意識で、各種の取組を行う。

(1)委託前の支援

 円滑な里親委託を進めるため、一時保護所や施設等の職員、里親支援機関に配置 された里親等委託調整員、里親等相談支援員又は心理訪問支援員(以下「里親等委 託調整員等」という。)の協力を得て、子どもとの交流や宿泊の体験などを通して、 子どもと里親との関係づくりや子どもを迎える準備を支援する。また、子どもにと っても生活環境の変化を受け入れ、安心して里親家庭で生活できるよう、子どもに 応じた支援を行う。緊急の委託の場合もあるが、子どもと里親の不安な気持ちを受 け止め、また、関係機関等と連携しながら子どもと里親の相性等の確認を行うなど 最適な里親委託等となるよう支援する。

(2)定期的な家庭訪問

 委託後は、里親と子どもの関係は日々の生活のなかで、様々の状況に直面するの で、児童相談所の担当者や里親支援機関の担当者が定期的に訪問し、里親と子ども の状況を確認し、相談支援を行う。 委託直後の2か月間は2週に1回程度、委託の2年後までは毎月ないし2か月に 1回程度、その後は概ね年2回程度訪問する。そのほか、里親による養育が不安定 になった場合などには、これに加えて必要に応じて訪問する。

 委託直後は、不安になりやすい里親を支えるために、家庭訪問は特に重要である が、その後においても、児童相談所や里親支援機関の担当者が、日頃から里親と顔 なじみになり、養育の状況を共有していることが重要である。

 定期的な家庭訪問は、児童相談所の里親担当職員、里親委託等推進員、施設の里 親支援専門相談員が分担・連携して行う。例えば、委託直後は児童相談所の里親担 当職員が重点的に訪問し、その後の定期的訪問は、施設の里親支援専門相談員が行 うなど、役割を分担するとともに、情報の共有を頻繁かつ密接に行う。

 里親委託等推進員や里親支援専門相談員が家庭訪問を行う場合は、初回は児童相談所の里親担当職員と同行しその後は単独で訪問することとしたり、児童相談所か らの紹介文書をもって訪問するなど、役割や児童相談所との関係を説明するととも に、事前に里親の状況や委託児童のケース概要について、児童相談所の持つ情報を共有した上で、訪問することが必要である。

 里親支援における家庭訪問は、委託されている子どもを含め里親家庭を支援する ものであり、できる限り子どもに面会し、暮らしの状況や希望などについて聞き、 相談に応じ、子どもの成長の状況を把握するとともに、里親に子どもの養育状況に ついて聞き、相談に応じ、必要な情報提供を行う。

また、訪問時には、自立支援計画に基づいた養育がなされているか、養育状況の 報告を受け、養育に関する記録を里親から見せてもらうなどして確認する。特に中 長期間の委託においては、適時自立支援計画を見直すことが必要であるが、この場 合、里親や子どもの意見を十分に聞き、里親と共同して作成することも検討する。

(3)里親の相互交流

 児童相談所は、里親支援機関等と連携し、里親と一緒に、里親による相互交流 (里親サロン等)を定期的に企画する。情報交換や養育技術の向上を図るとともに、 里親の孤立化を防止するため、参加を勧奨する。

 

(4)里親の研修

 養育里親、専門里親及び養子縁組里親には、里親登録時の研修とともに、登録更 新時の研修の制度がある。親族里親にも、必要に応じ、養育里親の研修を活用する 等により、養育の質を確保するために必要な研修を適宜行う。このほか、里親の養 育技術の向上のため、随時、研修の機会を提供する。

(5)地域の子育て情報の提供

 ① 保健センターや保育所、地域子育て支援拠点事業の活用など地域の社会資源を 適宜情報提供する。併せて、市区町村の関係機関と連携し、里親の支援の協力を 得ることも検討する。また、市役所等の手続きが円滑に進むよう、必要に応じ同 行する。

 ② 里親に対し、子どもが通う幼稚園や学校等を訪問し、里親制度の理解を求め、 協力を依頼するように指導する。必要な場合には、児童相談所の担当者は関係機 関等を訪問し、調整を行う。

 

(6)里親の一時的な休息のための支援(レスパイト・ケア)

 里親のレスパイト・ケアは里親が一時的な休息を必要としている場合には、次に 留意しながら、積極的に活用する。

 ① レスパイト・ケアのため、児童養護施設や乳児院、他の里親等を利用する際は、 子どもには事前に十分説明し、子どもが不安にならないよう配慮する。

 ② レスパイト・ケアは、日数に上限を設けることなく、個々のケースに応じて、 必要と認められる日数の利用ができる。

 ③ レスパイト・ケアを円滑に実施するためには、里親に事前に制度の説明や手続 きの方法と併せて、受け入れの施設や里親等を紹介しておく。また、児童相談所 や里親支援機関等は、子どもの状況や里親の意見等を参考にして、実施する施設 や里親等を選択する。

(7)相談

 里親支援機関等と連携し、里親からの相談に応じるとともに、子どもの状態の把 握や里親の気持ちを十分に聴くことが重要である。

 里親には、複数の相談窓口を用意する。児童相談所の里親担当職員とその他の相 談先について、連絡先と担当者名を記載した紙を渡し、担当者が交代したときは、 新たに渡すようにする。

 複数の窓口を用意する利点は、養育上の悩みに対して里親が複数の意見を聞きた い場合があることや、担当者との相性により相談しづらかったり、相談内容によっ ては、児童相談所には相談しづらいが、民間の相談先には相談しやすいこともある からである。

 

(8)社会的養護を必要とする障害のある子どもの支援

 里親に委託されている子どもが障害を有している場合に、その保護がより適切に 行われると認められる場合は、障害児通所支援を受けさせ、又は児童心理治療施設 に通所させることができることとされている。

 この場合、児童相談所において十分検討し、また、市区町村、特別支援学校等と の間で十分に連携を図ることが必要である。

(9)養子縁組の支援

 法第 11 条第1項第2号トでは、養子縁組に関する相談・支援を都道府県(児童 相談所)の業務として位置付けている。児童相談所においては、養子縁組の支援を 養子縁組里親への委託を通じて実施していくことが多いが、特に、特別養子縁組の 場合、養親となることを希望する者が家庭裁判所に申し立てを行うことにより縁組 手続が開始するため、里親担当職員は、6か月間の養育期間で問題が認められなけ れば、里親が家庭裁判所に特別養子縁組の申し立ての手続きをすることを支援する。

子ども担当職員は、保護者に家庭裁判所へ申し立ての手続きが開始したことを伝 え、併せて、保護者に家庭裁判所による調査があることを伝える。

 また、必要に応じて、養子縁組が成立した里親に対しても相談等の支援を行う。 特に、養子縁組の場合、「育ての親」であるという「事実」を子どもにいつ、ど のように伝えるかが大きな悩みとなる場合が多い。子どもにとって、自分の出自を 知ることは大切な権利であり、養親自らが自分の言葉で愛情をもって子どもに伝え ることが非常に重要である。児童相談所は、この「真実告知」の重要性とともに、 伝えるのに望ましい時期や具体的な方法について助言を受け、あるいは告知を経験 した先輩里親の体験談を聞くことができる場として、里親会や里親支援機関を紹介 するなど、必要な支援を行う。

 また、思春期には、実の親子と同様に、それまでの親子関係の変化や反抗、非行、 不登校など行動上の問題も起こり得る。

 養子縁組の場合には、乳幼児期から養育していても、子どもの問題行動について、 血のつながりがないことに原因を求め、あるいは真実告知による影響なのではと考 えて自信を失うなど、様々な葛藤と向き合うことがある。

 しかし、このような時期こそ、これまでの養育を振り返る良い機会でもあると捉 え、子どもや里親が必要な支援を求め、受けられるよう、支援体制を整えておくこ とが必要である。

 里親委託の要件に該当しない等の事情により、里親委託を行わないこととなった 場合には、養子縁組希望者に対し、法第30条第1項に規定する同居児童の届出を 行うよう指導し、法第27条第1項第2号に基づく児童福祉司指導を行う等、里親 の場合と同等の指導体制をとる。その他、里親制度を活用せずに養子縁組を支援す る端緒としては、民間あっせん機関のあっせんにより養親候補者宅で同居を始めた 子どもについて、同居児童の届出を受理した場合がある。こうした場合にも、家庭 訪問等により子どもの養育状況の調査を行い、必要に応じて児童福祉司指導を実施 するなど、民間あっせん機関と連携しながら必要な支援を行う。

 

(10)ファミリーホームへの支援

 ファミリーホームは、里親と同様、養育者の家庭に子どもを迎え入れて養育を行 う家庭養護であり、里親支援に準じて、研修や相互交流など、里親支援のネットワ ークの中で、必要な支援を行う。
 

8.子どもの権利擁護

 

 里親は子どもの最善の利益を実現する社会的養護の担い手であり、子どもにとって、 最も近くで子どもの権利擁護を実践するものである。 子どもが里親家庭のもとで安 全で安心して生活するとともに、子どもが自分の意見を述べることを保障することは、 子どもの成長にとって重要である。里親に委託された子どもには「子どもの権利ノー ト」を配布し、これからの生活が安全で安心できるものであること、子どもが自分の 意見を述べることができ、里親等大人と一緒に考えることができることなどを伝える。 また、子どもが権利侵害にあった場合の届出の仕組みとして、児童相談所や都道府県 等やその他相談機関の電話番号等を伝える。

 里親には、委託された子ども同士のいじめや実子との衝突等、子どもの間の暴力がある場合、里親だけ で対応が困難なとき、早い段階で児童相談所に対応方法について相談する。併せて、 「被措置児童等虐待対応ガイドライン」について、里親に対し、研修や講座等で周知 する。

 また、委託された子ども同士が交流する機会等を設けることは、子どもの声を聞く権利の擁 護とともに、子どもへの適切な援助を行うため役立つものである

9.里親支援の普及と理解の促進

 

 里親制度の普及促進については、市区町村や里親会と連携するなどして、市区町村 等の広報への掲載や、パンフレットの作成・配布、里親経験者による講演や体験発表 会などを行い、制度の普及に努め、新たな里親を開拓する。

 その際、子育て支援や教育関係その他の市民活動と連携し、里親について知っても らう勉強会を開催するなど、市民活動の地域への浸透力を活かして、社会的養護の担 い手である里親の開拓に取り組むことが効果的である。

 里親になろうとする動機は、子育てが好きとか、社会貢献をしたいとか、子どもが いないので子育てをしてみたいとか、自分の子育てに目途が立って余裕があるなど、 様々であり、それぞれの動機を活かしながら、里親の開拓に取り組む。

 また、里親制度についての理解を広めることは、様々な場面で家庭養育を円滑に 進めるために必要であり、社会全体で協力し、社会的養護を進めることが重要である。

10.里親委託及び里親支援の体制整備

 

里親委託及び里親支援の体制整備については、次の事項に留意しながら、地域の実 情に応じて推進する。

(1)担当職員の充実

① 児童相談所の里親担当職員

 里親委託及び里親支援については、措置の実施主体である都道府県、指定都市 又は児童相談所設置市(以下「都道府県市」という。)(児童相談所)が中心を 担うものであり、児童相談所では、専任又は兼任の里親担当職員が置かれている が、改正児童福祉法において家庭養護を原則として取り組むことが明確化された ことを踏まえ、専任職員を配置するよう努めること。

 里親担当職員は、子どもを担当するケース担当職員と密接に連携しつつ、児童 相談所管内の登録里親及び委託里親とのコミュニケーションを良くし、里親等委 託調整員等や里親支援専門相談員とチームを組みながら、里親支援機関の協力を 得て、里親委託及び里親支援の推進を図る。

② 里親委託等推進員

 里親等委託調整員は、里親支援事業により置かれる職員であり、児童相談所に おける非常勤職員として配置される場合のほか、里親支援事業を委託された法人 に常勤職員として配置することも可能である。また、里親支援事業を委託された 法人の常勤職員が、里親等委託調整員として児童相談所内で業務に当たる場合も ある。 

 里親等委託調整員は、里親支援事業全体の企画及び里親と乳児院等児童福祉施 設、関係機関との円滑な調整、自立支援計画作成等を行い、又は児童相談所の里 親担当職員を補助して、地域の里親委託及び里親支援を推進する。

③ 里親等相談支援員及び心理訪問支援員

 里親等相談支援員及び心理訪問支援員は、里親支援事業により置かれる職員である。

 里親等相談支援員は、現に子どもを養育している里親や、レスパイト・ケアな ど短期間子どもを養育している里親からの相談に応じるとともに、里親家庭を定 期的に訪問し、子どもの状態の把握や里親への指導等を行う。

 また、心理訪問支援員は、里親等へ委託された子どもであって、虐待等により 特に専門性の高い支援が必要とされる子どもに対して、心理面からの訪問支援を 行う。

④ 里親支援専門相談員

 児童養護施設又は乳児院に置かれる里親支援専門相談員の趣旨は、児童相談所 の機能を補完する役割を持つだけでなく、施設に地域支援の拠点機能を持たせ、 施設と里親との新たなパートナーシップを構築するためのものである。

 里親支援専門相談員に充てられる人材は、社会福祉士、精神保健福祉士、児童 福祉司となる資格のある者又は施設(里親を含む。)において児童の養育に5年 以上従事した者であって、里親制度への理解及びソーシャルワークの視点を有す るものでなければならない。里親支援ソーシャルワークは、確立した業務方法が ないが、児童相談所の里親担当職員や里親等委託調整員等と緊密な連携を図りな がら実践を積み重ね、里親支援ソーシャルワークの専門性を高めていく。

 里親支援専門相談員の役割は、(a)所属施設の入所児童の里親委託の推進、(b) 退所児童のアフターケアとしての里親支援、(c)所属施設からの退所児童以外を 含めた地域支援としての里親支援の3つの役割を持つ。児童福祉法上、施設はア フターケアの機能を持つとともに、地域住民の相談に応じる機能を持つからであ る。

 里親支援専門相談員は、子どもと里親の側に立って里親委託の推進と里親支援 を行う専任の職員とし、施設の直接処遇の勤務ローテーションに入らないものと する。児童相談所の里親担当職員や里親等委託調整員と分担連携して、定期的な 家庭訪問を行うほか、施設機能を活かした支援を含め、里親支援を行う。また、 児童相談所の会議に出席して情報と課題を共有する。

 里親支援専門相談員を配置する施設は、都道府県市が里親支援機関に指定し、 里親支援の業務を行わせるという役割を明示することが望ましい。

 また、児童家庭支援センターを附置する施設では、里親支援専門相談員は、セ ンターに配置された相談・支援担当職員と連動して支援を実施することが望まし い。

 里親支援専門相談員は、新規里親開拓の活動や、里親サロンへの出席、未委託 里親への訪問等も行い、日頃から地域の里親と顔なじみになり、施設に措置され ている児童にふさわしい里親を探して、児童相談所が行う里親委託の事前調整を 行う。また、里親支援専門相談員は、退所児童のアフターケアや、退所児童以外 の地域支援として、里親家庭の定期的訪問、相談等、地域のソーシャルワーク活 動を行う。その際、児童相談所との密接な連携が前提となる。

(2)里親支援機関

 里親支援機関は、里親会、児童家庭支援センター、里親支援専門相談員を置く施 設、公益法人やNPOなど、様々な主体が参加し、それぞれの特色に応じて、役割 分担と連携を図り、里親制度の普及促進、里親委託推進、里親支援の事業を行う。

 都道府県市は、「里親支援事業の実施について」(平成29年3月31日雇児発 0331第44号)に基づき、里親支援事業を委託する場合には、当該委託先を里 親支援機関(A型)として指定する。また、委託を受けずに里親支援の事業を行っ ている場合には、その役割を明示するため、里親支援機関(B型)として指定する。

① 里親会

 里親会は、里親の相互交流や経験豊富な里親の相談による養育技術の向上、里 親の孤立化の防止のために重要な役割を持つ。 このため、会員相互の交流のみ が目的の私的な団体ではなく、公益的な団体である。

 このような役割を明示するため、都道府県市は、地区の里親会が里親支援事業 の委託を受けていない場合であっても、里親支援機関(B型)として指定するこ とが望ましい。

 また、このような役割から、「里親及びファミリーホーム養育指針」にも記載 されているとおり、里親は里親会の活動に必ず参加するものとする。このため、 都道府県市は、登録里親の氏名、住所、委託の有無などの基本情報を里親会に提 供して、参加勧奨を行うことが必要である。

 里親会の活動の充実のためには、事務局体制の充実が必要であることから、里 親等委託調整員等、里親支援専門相談員、児童家庭支援センターの職員は、里親 会の事務局を支援することが望ましい。

 里親会の役員は、子どもの最善の利益のために、多様な考え方や事情を持つ里 親相互のまとまりを良く保ち、里親の相互交流を通じた養育力の向上を図る。

② 児童家庭支援センター

 児童家庭支援センターは、児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的 な知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な助言を行うとともに、市町村の 求めに応じ、技術的助言その他必要な援助を行うほか、要保護児童やその保護者 に対する指導を行い、地域の児童、家庭の福祉の向上を図ることを目的としてい る。

 児童家庭支援センターは、里親及びファミリーホームからの相談に応じる等、 必要な支援を行うこともその業務に位置づけられており、里親支援事業の委託を 受けていない場合であっても、里親支援機関(B型)として指定し、意識的に里 親支援の業務の分担と連携の関係を明確にすることが望ましい。

③ 里親支援専門相談員を置く施設

 里親支援専門相談員を配置する児童養護施設又は乳児院については、地域でそ の活動を行いやすくするために、里親支援事業の委託を受けていない場合であっ ても、里親支援機関(B型)として指定し、里親支援の業務を行わせるという役 割を明示することが望ましい。

④公益法人、NPO等

 里親委託の推進や里親支援のために高い実力の発揮を期待できる公益法人やN PO等がある場合には、里親支援事業の委託を受けていない場合であっても、里 親支援機関(B型)としてこれを里親支援機関に定めることが効果的である。な お、補助制度としては、里親支援を中心とする児童家庭支援センターとすること も可能である。

(3)役割分担と連携

 法第11条第1項第2号へにおいて、里親制度の広報啓発等による里親開拓から、 委託児童の自立の支援まで、一貫した里親支援が都道府県(児童相談所)の業務と して明記された。これらの里親支援については、同条第4項において、知見や経験 を有するNPO法人等の民間団体に委託することも可能であることとされている。

 児童相談所の里親担当職員と、里親等委託調整員等、里親支援専門相談員との間 での役割分担や、児童相談所と里親支援機関との役割分担、里親支援機関の間での 役割分担は、地域の実情に応じて、効果的に行えるよう、適切に工夫する。

 行政事務や措置に直接係る業務、すなわち、

 ① 認定・登録に関する事務(里親の申請の受理、里親認定の決定・通知、里親の 登録、更新等の受理等)

 ② 委託に関する事務(里親委託の措置の決定)

 ③ 里親指導・連絡調整(レスパイト・ケアの利用決定)

 ④ 里親委託の解除(委託解除の決定) などは、児童相談所が直接に行う必要がある。

 

一方、それ以外の業務、すなわち、

 ① 新規里親の開拓(広報啓発、講演会、説明会、体験発表会等の開催等)

 ② 里親候補者の週末里親等の調整(子どもと里親候補者の交流機会等)

 ③ 里親への研修(登録時の研修、更新研修、その他の研修)

 ④ 里親委託の推進(未委託里親の状況や意向の把握、子どもに適合する里親を選 定するための事前調整、里親委託の対象となる子どもの特定のための事前調整等)

 ⑤ 委託に関する事務(里親委託の対象となる子どもの特定、子どものアセスメン ト、委託する里親の選定、措置に当たっての里親や子どもへの説明、自立支援計 画の作成)

 ⑥ 里親指導・連絡調整(養育上の助言、養育状況の把握、実親(保護者)との関 係調整、自立支援計画の見直し)

 ⑦ 里親家庭への訪問相談、電話相談

 ⑧ レスパイト・ケアの調整

 ⑨ 里親サロンの運営(里親相互の交流)

 ⑩ 里親会活動への参加勧奨、活動支援

 ⑪ 里親委託の解除にあたっての子どもや里親への対応

 ⑫ アフターケアとしての相談

などは、児童相談所の里親担当職員が直接行う場合のほか、児童相談所の里親担当 職員を中心として里親支援機関、児童家庭支援センター、里親会、公益法人、NP O等を活用して積極的に推進することも可能である。

 その際、地域の実情に応じ、各機関の特徴や得意分野を活かして、分担・連携す る。例えば、レスパイト・ケアの調整について里親等委託調整員と里親支援専門相 談員との間で行い、レスパイト・ケアとしての施設利用をきっかけとして、里親と 里親支援専門相談員との信頼関係の構築を図り、当該里親への訪問支援を里親支援 専門相談員が担うことや、未委託里親へのトレーニングのうち、実習については里 親支援専門相談員が担うことなども考えられる。

(4)里親支援機関と守秘義務

 法第11条第1項第2号ヘにおいては、都道府県(児童相談所)における里親に 関する業務が規定され、同条第4項及び児童福祉法施行規則(昭和23年厚生省令 第11号)第1条の41で、当該業務に係る事務の全部又は一部を、都道府県知事 が当該業務を適切に行うことができる者と認めた者に委託することができることと されているが、これらの規定により委託を受けた者について、法第11条第5項に おいてその守秘義務が規定されている。

 また、委託を受けていない場合であっても、里親支援専門相談員を配置する乳児 院又は児童養護施設や、児童家庭支援センターが里親支援機関として指定を受けて 支援を行う場合においても、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23 年厚生省令第63号)第14条の2において児童福祉施設の職員としての秘密保持 義務が規定されている。

 なお、里親会やNPO法人など児童福祉施設以外のものが、委託は受けていない が里親支援機関として指定を受けて支援を行っている場合には、秘密保持義務は課 されていないが、その業務上知り得た個人情報の取り扱いについては、次に掲げる 事項を遵守するよう指導すること。

 ① 正当な理由がなく、業務上知り得た支援対象者又はその家族の秘密を漏らして はならないこと。

 ② 個人情報が記された資料を、支援の実施以外の目的で複写又は複製してはなら ないこと。作業の必要上、複写又は複製した場合は、作業終了後適切な方法で破 棄しなければならないこと。

 ③ 個人情報漏洩等問題となる事案が発生した場合には、事案の発生した経緯及び 被害状況等について、記録に残すとともに、被害の拡大の防止及び復旧等のため に必要な措置を講ずること。

 ④ その保有する個人情報にアクセスする権限を有する者をその利用目的を達成す るために必要最小限の人員に限ること。

 ⑤ ①から④の内容を含め、個人情報の取り扱いに関し、規定を設け、適切に保護 し、管理すること。

(5)市町村や子育て支援事業、各種の市民団体との連携

 里親制度の普及や里親支援の充実のためには、市町村や各種の子育て支援事業、 各種の市民団体との連携が重要であることから、関係者に里親制度についての理解 を促進し、協力関係を構築する。

 特に、改正児童福祉法において、市区町村がその設置に努める事とされている 「市区町村子ども家庭総合支援拠点」においては、里親が地域において社会的につ ながりを持ち、孤立しないために、児童相談所や関係機関と連携して必要な支援を 行うこととされていることから、積極的に連携を図ること。

(6)里親委託等推進委員会

 都道府県市の里親委託等推進委員会は、児童相談所の里親担当職員、里親委託等 推進員、施設の里親支援専門相談員、里親会の役員のほか、必要に応じ学識経験者 等に参加を依頼して行う。都道府県市の単位で設けるほか、児童相談所の単位でも 設ける。年2~3回以上の開催が望ましい。

 里親委託等推進委員会は、各都道府県又は各児童相談所管内における里親委託等 に関する目標を設定し、効果的な里親委託の推進及び里親支援の充実の方策につい て検討する。また、日頃から情報交換を密接に行い、困難事例への適切な対応方法 について協議する。

 里親委託等推進委員会の構成員は、事業の実施上知り得た子どもや里親等に関す る秘密を正当な理由なく漏らしてはならない。

里親か施設か実親か

パーマネンシーの保障​

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