里親か施設か実親か
パーマネンシーの保障

児童相談所は虐待相談ごとに、家庭訪問により状況を確認し、一時保護するかしないかを判断し、一時保護には裁判所の了解を取ることとされた。
状況確認の結果、一時保護しないと判断された場合には、地域の子ども家庭センターなど継続的家庭訪問の可能な組織にフォローを委ねることに変更1。要対協が全案件の状況を月1回チェックする。
(変更理由:児童相談所でフォローし続けることはマンパワー的に困難)
一時保護は児童相談所内の施設又は委託した里親、施設が行う。
一時保護中に実親への対応を行う担当者が、子どもともよく話したうえで、実親に戻すかどうかの判断を行い、戻すのが難しいと判断した場合には、下記の運用に変更2。
① 虐待を行った実親に子どもを戻せるよう、My Treeペアレンツのような専門家による研修をセッティングすることで児童相談所の手離れをよくする。
② 実親の了解のもと、児童相談所の里親担当がまずは扶養義務のある祖父母の里親可否を判断し、それが難しい場合には、実親と相談のうえ、親族知人里親候補によるミーティング(ファミリーグループ・カンファレンス)を開催する。ミーティングには実親が同席する。但し、児童相談所の里親担当は同席しない。しかし、現状では親族知人里親探しはほとんど行われていない。虐待理由の場合であっても、親族知人里親を推進すべき。扶養義務の無い親族知人里親には里親手当が支払われる。児童相談所との相談なく、親族知人里親になっていることが判明した場合には、児童相談所の研修を受けた後は里親手当を支払うものとし、フォローを継続する。
(変更理由:現状では実親の経済および子育て状況改善への児童相談所・地域の努力が不足している、将来的に実親の状況が改善した際に、児童相談所の判断で実親に戻しやすい親族知人里親探しに児童相談所里親担当は尽力すべきで、委託の決まった親族知人里親には一定の研修及びフォローを行う)
いずれも難しい場合に里親か施設への委託を行う。その際に里親・施設を問わず、委託の了解を取らねばならないとされている。これを変更3。①②いずれも拒否する実親には児童相談所が独自に委託先を判断できるようにする。
(変更理由:了解を必須とすると、特に里親への委託が進まない。結果的に子どもの権利を守ることにならない)

児童相談所の仕事量と求められる成果の関係を勘案し、児童相談所の職員には無理のない役割を与えるべき。
施設と里親と親族里親と実親フォローのコストを算出し、行政としてはより安価な方向性を優先することに運用を変更4。変更手続きは必ず児童相談所経由で行う。
(変更理由:税金によって運営する以上、子どもの意思によって施設か里親かを選択させるべきではなく、より少ないコストで運用をはかるのは当然、実親フォロー>里親>施設がその順である)
里親候補者には、子育ての責任を果たせるような充実した研修を行う。現状の研修は子育て経験の無い親にっとっては全く不十分である。
里親の募集と基本的な研修は基本的に都道府県、児童相談所が行い、里親支援センターが情報を共有する。現状では里親支援センターに募集機能を持たせているが、地域での活動紹介に付随して里親希望者が見つかった場合に限定して対応することに変更5。
(変更理由:児童相談所が里親の確保と研修に責任を持ち、研修成果の確認を行う。また、国・自治体がまとめて広報を行うことが効率が良い。現状の広報予算は不十分)
子育ての悩みを受け止め、相談にのれる体制の整備が必要である。子ども家庭センターがその役割を担うが、相談を受けてからの対応となるため十分とはいえず、自ら学ぶ環境を提供することが望ましく、子育てYouTube動画を案内することに変更6。
(変更理由:介護のように子育てケアマネを整備することが検討されている。それに加え、自ら子育てを学び、里親研修の一環としても、国として子育てYouTube動画の提供を行うことが望まれる、ちなみに教育基本法では家庭教育について、第10条第2項で
「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」と定めている。)

乳児院では3歳未満のすべての子どもを里親への委託に変更することを原則とするよう運用に変更7。
(変更理由:3歳になるまでにできるだけすべて里親への委託を完了させ、乳児院から児童養護施設への移転は行わないことが望ましい。子育て経験の無い若い里親希望者の多くも3歳までの委託を望んでおり、委託可能性は高いが、児童養護施設からの委託は難しくなる)
児童養護施設は個々の子どもに里親、フレンドホーム(短期の里親)の機会を毎年確実に提供することに変更8。子育て経験のある里親候補者には必ずフレンドホームを経験させ、子どもも望むならば里親委託への転換を推進する。都度、児童相談所に報告義務を負う。
(変更理由:子どもにとってもいきなり里親委託ではなく、お試し期間としてのフレンドホームが必要。児童相談所が里親の確保に責任を負ったうえで、子どもに機会提供を保障すべき)
研修、フレンドホームとしての経験は評価のうえ、里親としての適性を判断する。適性ありと判断した場合には一定期間以内に必ず里親になってもらえるような運用に変更9。
(変更理由:現在は研修を受けたにかかわらず、長期間紹介の無い場合も多く、それでは里親になることへのモチベーションを維持できない)
児童相談所が適性なしと判断した場合には本人にその旨を知らせ、以後の里親斡旋を行わない。

また、将来的に普通養子縁組を望まない場合には、里親への斡旋は行わず、一時保護時の里親に特化して運用することに変更10。
(変更理由:パーマネンシーを保障するには、普通養子縁組の可能性の無い里親には里親になってもらわないことが子どもの利益になるため。普通養子縁組を望む運用に変更することは可能。)
また、里親になるタイミングで、児童相談所担当者とともに、施設にて実親に会ってもらうことを原則とするよう変更11。
(変更理由:実親の子育て方法と子どもへの思いを里親が引き継ぐため、また実親の気持ちを知ることにより実親に戻すこととなる可能性を確認できるため)
里親に委託した後の里親のフォローは里親支援センターが行う。特に発達障害児を抱える里親には、偏見による周囲との軋轢に悩むケースも多い。子どもにもヒアリングしたうえで、1年毎に判断を行っていると思われる。児童相談所は里親支援センターの判断を尊重するように変更12。
(変更理由:里親と頻繁にやりとりをし、信頼を得た里親支援センターの判断なら、里親もその判断を尊重できる。児童相談所の判断によると言われると、里親支援センターを信用できなくなり、相談しにくくなる)

児童相談所は実親の状況を適宜チェックしているが、実親の生活面、精神面でのゆとり、健康上の問題を半年に1回確認し、全国共通フォーマットによるレポートを作成。児童相談所所長が2年経過時にも実親に戻せないと判断した場合には、児童相談所が普通養子縁組を推進するルールに変更13。
(変更理由:子どものパーマネンシ−保障を前提とすると、里親が実質的な親権者となり、子どもも里親を信頼している場合には、形式的にも親権者となる普通養子縁組が妥当)
普通養子縁組には実親の了解を得ることが基本であり、了解が得られない場合には裁判所の判断を得るものとされているが、実親に戻せないケースとみなすのは、下記の運用に変更14。
子どものヒアリング結果を伝えた後、
①実親が子どもの引取を希望しない場合
②児童相談所が専門家による研修受講を勧めても、受講を希望しない場合(その場合には児童相談所が面会すべきではないと判断)
③里親と会うことを拒む場合、子どもとの面会に来ようとしない場合
(変更理由:親権者としての責任を果たそうとしていない親は、子どもの利益を守るためにも、親権者であることを継続すべきではない)
児童相談所は個々の子どもについて、年1回の方針確認を施設、里親との間で行い、子どもとの意思確認も必ず行い、結果は文書化し、関係者が見られるように運用を変更15。
(変更理由:施設では方針確認が行われているが、里親には必ずしも行われていない)

施設か里親かを選択する権利は子どもには原則として認めないが、里親のプロフィールを見た際、里親候補と面談した際に自身にとっての良し悪しを判断する(選べる)権利はあるとの考えのもと、運用を変更16。
(変更理由:子どもの意思を尊重することで、いい里親に出会えるようにするため)
子どもは実親と会う権利を有し、親権者である実親にも子どもと会う権利がある。会わせないのは、実親が希望しない場合、児童相談所が面会すべきではないと判断(できる だけ最小限に)した場合に限定することに変更17。
(変更理由:面会できないことは子どもの権利を奪っている)
自立支援体制としてのベストは、普通養子縁組で親権者となること。但し、養子縁組では18歳までは里親手当レベルの報酬を国として支払うよう変更18。その手続きは必ず児童相談所経由で行う。
(変更理由:養子縁組に里親同様の報酬を支払わないことで、養子縁組を進みにくくしている、いつまでも里親のままでは子どものパーマネンシーを保障することに反する)

自立支援の観点からは、住む場所、相談できる相手が自立できるまでは必要であり、普通養子縁組が里親よりも望ましい。里親に自立支援の機能を求める場合は、里親期間の延長が必要で、児童相談所の関わりを継続する運用に変更19。施設入所者の場合には、施設内の自立支援担当職員がフォローを行っているが、退所後のフォローには限界があり、過重な業務となっている。自立援助ホームへの移行がスムーズにできるよう、児童相談所のフォローが必要。
(変更理由:児童相談所の監督下で自立支援を行うことで、子どもの利益を守る必要あり)
※自立援助ホームは15歳から20歳が本人の意思で入所するものであり、現状では児童相談所との関連は無い。
児童虐待によるトラウマ、PTSDの治療は、自立後であっても国費で受けられるよう変更20。
(変更理由:本人には責任が全くなく、国が対応すべきものである。災害や事故、パワハラ・セクハラ、家庭内暴力などによるものも同様か)
研修前の里親の適性判断で、部屋の数をチェックしているが、不要ではないか。運用を変更21。
(変更理由:狭いと感じれば転居するのが通常で、重視すべきは里親になりたいというモチベーション。但し同居する実子の了解は必要。)

【里親委託解除を減らすための方法】
1.里親委託時に解除となる場合の理由を文書で明確に伝える
①実親に戻す
②里親の虐待により子どもが里親の継続を希望しない
③里親の愛情不足が子どもへのヒアリングで明確
2.里親支援センターが里親の子育ての良き相談相手になり、孤独にさせない
3.児童相談所が里親支援センターの判断を尊重する、里親支援センターが委託解除が妥当と考える場合は、里親にその理由を伝える
4.里親委託時にできるだけ実親と面会し、今までの子育てについての情報を得る
5.その後もできるだけ実親とコミュニケーションを取り、子どもにも面会させる
6.子育てについてのYouTube動画を閲覧したり、研修に参加する場を用意する
7.里親と子どもとの関係が順調で、かつ変更11に記載の実親に戻すことが難しい状況であれば、児童相談所の判断により一般養子縁組を推進する
【特別養子縁組と普通養子縁組】
普通養子縁組は主に相続対策として運用されてきたが、
①実親との関係が残り、戸籍で実親をたどれる点、実子としての相続が可能なこと
②特別養子縁組において縁組の解消は困難だが、普通養子縁組であれば子どもが15歳以上であれば協議離縁により裁判所の判断がなくても養子縁組の解消が可能なことなどの子どもにとっての利点がある。
実親がわかっている場合には、裁判所の判断がなくても、実親の了解のもとに児童相談所が里親との間に普通養子縁組を推進することとしてはどうか。その際に子どもの積極的な同意は不要と思われる。
特別養子縁組の成立のためには、実親の了解がなくても
①父母が意思表示できない場合
②父母による虐待、悪意の行いがある場合
③その他養子となる子どもの利益を著しく害する事由がある場合
には裁判所の判断が必要とされている。
しかし、子どもの利益を第一に考えると、実親がわかっている以上、特別養子縁組ではなく、普通養子縁組とすべきではないか。なぜなら、養親と良好な関係が築けていない場合には、15歳以上に実親との同居を選択できることが、子どもの利益につながるからである。また、子どもが戸籍上で実親をたどれない特別養子縁組の制度は、子どもにとっても不都合である。
特別養子縁組においては、成立前に里親になってから6ヶ月以上の監護期間が必要とされている点も、予防接種の際など形式的に親権者となれないがゆえのデメリットが生じており、運用上の改善が必要。
また特別養子縁組では民間業者の斡旋も認められているが、児童相談所と進める場合との費用負担に大きな格差がある。外国人を親とする、一部民間企業の斡旋(多額の報酬を得ている)には社会的非難がある。民間業者による斡旋の場合でも、児童相談所の一定の関与を前提とすべきではないか。
【ファミリーホームの立ち位置】
法的にはファミリーホームは、里親や児童養護施設職員など経験豊かな養育者の住居において、同居して養育を行うとされ、5名ないし6名の子どもの大きな家族となる。里親手当に加え、相応の措置費を交付できる制度となっている。位置づけは施設ではなく、家庭養護となっている。夫婦+補助者の計3名で養育を行う。子どもの生活費、人件費、建物を賃借して行う場合には賃借費なども支払われる。児童相談所からの受託義務があり、監査対応も必要となっている。
児童養護施設が複数のグループホームの形で運営されることも増えているが、養育者が交代制であることに違いがあり、ファミリーホームの場合のみ家庭養護が可能とされている。
課題としては
①兄弟を一緒に受け入れるには向いているが、いずれ5名ないし6名集めなければならない点が問題。普通の家では1人1部屋だと部屋数が足らなくなるため、賃借する必要が生じるが、そうなると家庭養護としては育てにくい環境となる。
家庭養護と位置づけるのであれば、生涯を通し親子と呼び会える関係が望ましく、3名ないし4名を基本とし、最大6名とすべきではないか。
②安定した家族を維持する必要があり、受託義務があるとはいえ、児童相談所からの短期受託や対応が難しい子どもの安易な受け皿とすることには問題がある。
③ファミリーホームとして長期間となる場合も想定されるが、親権者となる普通養子縁組に移行するには相続者が増えすぎるという課題があり、したがってパーマネンシーの保障は難しいのではないか。里親が確保できるのであれば、里親委託を優先すべきである。