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My tree プログラム(森田ゆり)

里親入門

 My tree子育てプログラムの紹介

一般社団法人 MY TREE では、2024 年度から新たに「MY TREE 子育てプログラム」の実践を開始しました。ここではこのプログラムを紹介させていただきますが、その前にこのプログラムの前提となる「MY TREE ペアレンツプログラム」の概略をご理解ください。
児童虐待問題の抜本的解決のためには、虐待に至ってしまった親たちの回復が不可欠との考えから、米国で 1980 年代から虐待問題の現場で働いてきた森田によって「MY TREE ペアレンツプログラム」は、2001 年に日本で開発され、以来今日まで23年間実践を続け、約 1600 人の修了生をだしてきました。この「MY TREE ペアレンツプログラム」の方法論・技法を活用する「MY TREE 子育てプログラム」は、「MY TREE ペアレンツプログラム」の実践を担ってきたベテランたちにこの新しいプログラムを実施してもらいます。ただし対象を広げて、子育てに不安を感じている人や子育てについてもっと深く学びたいすべての人への支援プログラムです。
「MY TREE ペアレンツプログラム」は、虐待に至ってしまった親達を対象とするために、治療的要素の多いプログラムで、13 セッション+3 回の個人面接が必要です。
「MY TREE 子育てプログラム」は、虐待的言動の有無にかかわらず、子育てについて学びたいすべての人を対象にしたプログラムで、治療的要素よりは、スキルの習得が中心で、7 セッション+1回の個人面接で修了です。

このプログラムの実施のためにアクセスできる予算として、市町村が 2024 年度から実施する「親子関係形成支援事業」があります。

 「MY TREE ペアレンツプログラム」:  虐待的言動に悩む親の回復と更生

深刻な虐待に至ってしまった親達の多くは共通して、次の三つの要因を抱えています。
日々の多重ストレス+孤立した子育て+未解決の過去の傷つき(トラウマ)
MY TREE では、それらの要因に対応するため、瞑想・呼吸法の習慣化、8 つのストレス要因シートや怒りの仮面(怒りの裏の痛み・悲しみをさぐる)をはじめとする 7 つのツールを学び、さらに率直な感情表現や、子どもやパートナーとの対話力を練習します。認知にとどまらず、感情、身体、理性、魂の全てに働きかけます。プログラム全体の目的は、セルフケアと問題解決力を日々練習・活用して、虐待言動を終止します。
MY TREE プログラムでは、日本の四季の自然の治癒力を大いに活用して、木や太陽や風や雲からも生命力の源をもらうという人間本来のごく自然な感覚を取り戻します。
このプログラムの詳細は、「虐待・親にもケアを」(築地書館、森田ゆり編著 2640 円)を参照ください。

 MY TREE ペアレンツプログラム修了生の声

「怒りはいけない気持ちと思っていましたが、怒りは大事な気持ちでとても複雑な気持ちで、ひとつひとつを誰かに話せたとき、怒りの爆発は無くなったように思います。」
「長いトンネルにいたのが、出口の光が見えてきたような気持ちです。」
「はじめて、正直な気持ちを話す場を与えてもらいました。私の気持ちを口にして、子どもの気持ちを聴く。少しずつ子どもが気持ちを口にするようになりました。」
「子どもに手をあげることがほとんどなくなりました。」
「ずーっと親を怨んでいました。恨んだり、怒ったり、そんな真っ黒なパワーを笑ったり、喜んだりと明るいパワーに変えることできる力の使い方を得ました」
「私の木はあれからも根をはり続けています。相変わらず嵐のときはあるけれど、でもそれで折れてしまわず、しなることができるようになった自分がいます。」

 「MY TREE 子育てプログラム」のあらまし

2時間クラスを 7 回連続+終了面接 5~15人程度の固定メンバー
必用教材:「気持ちの本」 「しつけと体罰」 (どちらも童話館出版)
3 冊の小冊子「怒りの仮面」 「心の応急手当」 「アロハ・キッズ・ヨーガ」
対象者:子育てに携わるすべての人(親、里親、保育者など)。 特に子育てに苦しさを感じている人が、体罰やネグレクトに陥らないためのスキルに焦点をあてています。
講師:「MY TREE ペアレンツ・プログラム」の実践者訓練を受けて経験を積んでいるMY TREE スペシャリスト。
教材、保育も含めて全て無料
MY TREE 子育てプログラムのフレームワーク

 

 

 

 

 

 

 

プログラムの内容
1 安心な出会いの場: 目的と約束事の確認
瞑想ボディワーク わたしの木(止観瞑想)
ソマティック・アプローチとは soma ソーマとはギリシャ語で生きた身体の意
泣く力は生きる力 ヤダヤダワーク

 

2 体罰の 6 つの問題
エンパワメント・アプローチとは 氷山のたとえ
MY TREE アクティビティ


3 気持ちのワーク
「気持ちの本」を使って、家庭で、子どもの施設で、学校で気持ちのワークをする

親が子どもの気持ちを聴くときのスキル
親が自分の気持ちを言葉にして伝える練習
<心の応急手当>のスキル


4 体罰に代わる10のしつけの方法
ピーストーク:子どもどうしの喧嘩に対応する


5 <怒りの仮面:傷ついた心の上に>
二つのタイプの怒り
怒りは大切な感情

6 健康で楽しい子育て 7 つのコツ
そのコツ1 しつけ糸のように
そのコツ2 子どもを尊重する 自分を尊重する
そのコツ3 子どもの力への信頼
そのコツ4 比較しない
そのコツ5 子どものほめ方を知る
そのコツ6 今を子どもと楽しむ

そのコツ7 子どものレジリアンス


7 家族ミーティングの開催
ロールプレイで練習

 

終了時面接

子どもの虐待のフレームワーク.png
怒りの仮面.png

 里親研修の重要性

1980年代の後半、森田はカリフォルニア州保健福祉局の児童虐待対策課の職員として、里親研修プログラムの開発とその実践に携わりました。米国の虐待対応は特別な医療的ニーズがある場合以外は、分離になった子どもは皆里親に預けられます。そのため里親研修には大きな予算と人材を投入していました。日本も社会的養護の担い手を、施設中心から里親中心に移す厚労省の新たな方針のもと、全国で里親研修を実施するシステムが出来上がりつつあります。
ここでご紹介している「MY TREE 子育てプログラム」は、里親たちも対象にしています。
里親制度は、家庭的環境で育つというメリットはありますが、里親が子どもに対応しきれないとき、複数の職員が対応しうる施設よりも必然的に措置変えになることが多くなります。米国でも英国でも里親制度のもとでは、実に頻繁に措置変えが起きて、時にはそれは一年に数回になるケースもあります。森田も米国で、措置変えのたびに見捨てられ観を募らせ人間不信となっていく子どもを何度も目にしてきました。それはとても悲しい現場です。措置変えを避けるために、家族えん会議(ファミリー・グループ・カンフェレンス、修復的サークル)を開催したこともありました。
社会的養護の子どもたちを主として里親に預けるという方針に切り替えた日本のこれからは、トラウマを抱えた子どもへの里親たちの対応スキルや、地域ごとの里親同志のサポートネットワーク
充実のための丁寧な研修が不可欠です。
「MY TREE 子育てプログラム」は、そのようなニーズにも応え得る内容の取り組みです。

 虐待に至った親が、回復プログラムにつながらないのは?

~日本の児童虐待防止法制度の欠陥~
虐待で児童養護施設等に措置された子どもたちは、親の回復を願って一緒に暮らせる日を 5 年も、ときには 10 年も待ち続けています。
一方で、虐待言動からの回復を必要としている親達は親子分離措置になったケースにとどまらず在宅ケースでも実に多くいるにもかかわらず、回復プログラムにつながる人はわずかだという現実があります。

MY TREE ペアレンツプログラムも、受講はテキスト代も保育料も含めてすべて無料なのですが、10 人の参加で実施のところ、参加希望者が 4 人、3 人、ときには 1 人だけのこともあり、開催をキャンセルしなければならないという、なんとももったいない事態になることもあります。
虐待に至ってしまった親達がなかなか回復プログラムにつながらない最大の理由は、プログラム受講が本人の任意だからです。関心があって受講申し込みをしても、仕事があるから、キャリア訓練を始めたいから、パートナーが参加を反対しているから等の理由で、キャンセルする親がしばしばです。
これは、児童相談所の機能に司法の関与がきわめて限定的であるという日本の法制度に原因があります。日本には虐待した親の回復プログラム受講命令制度も、DV 加害者更生制度もありません。諸外国では、韓国や台湾でも司法が虐待事案に積極的に介入する制度になっていますが、日本では、裁判所が直接親に回復プログラムの受講を求めるしくみがないため、必要とする加害者のほんのごく一部にしか届かないのです。

2018~19 年に起きた千葉県野田虐待死事件と目黒虐待死事件はその悲惨さでマスコミに大きく取り上げられたために記憶に新しいケースです。いずれも、児童相談所が一時保護をしていたにもかかわらず、虐待に至った父親たちへの回復更生への取り組みが全くないまま措置解除したために、再虐待が起きて、どちらも死に至ってしまいました。

日本の児童虐待対応元年ともいえる 2000 年の児童虐待防止法の成立以来、4 分の一世紀近くになりますが、今もその仕組みはできていません
一行政機関に過ぎない児相の権限には限界があります。司法が強制力を持って、加害者の回復を促す仕組みが、再発防止に不可欠です。仕事があるから、パートナーが反対しているから、などの事情があっても、自分を変えることを最優先するための後押しを親達は必要としているのです。

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